取締役ガイドブック〔全訂第4版〕 / 経営法友会 会社法研究会 (編集)

ざっと目を通したので感想をメモ。機関法務業務に従事される方にとっては手元にあると有益な一冊と感じた。

 

全体がB5版で180頁程度のところに、会社法のガバナンス関係の部分のまとめ(100頁弱)、その他の法令遵守に関するまとめ(40頁弱)及び資料(40頁弱)という構成。取締役に対する資料ということを考えると、長くてもこの程度にしておかないといけないのだろう。

 

それぞれの部分についての感想をメモしてみる。

  • ガバナンス関係の部分のまとめは、取締役に説明する側としては、取締役に対してどこまで詳細に説明するかを考えるうえで、記載が参考になるのかもしれない。また、コンパクトにまとめられた中に実務的な相場観のようなものへの言及もあって、初心者の法務担当者が、この分野の実務を概観をする用途にも使うことができるかもしれない*1。ただ、会社法関係の用語については説明がある(巻末に用語集もある)ものの、原告適格とか、訴訟告知という民事訴訟法の用語が説明なく使われていて、そのあたりは、もう少し手当てがあっても良かったのではなかろうかとも感じた。
  • その他の分野の法令遵守に関する資料は、極めてざっくりとしているが、問題の所在だけ伝えるというのが適当と考えられる(それ以上の詳細がいる場面は少ない)ので、このあたりの見極めも、興味深く読んだ*2。紙幅が少ない中でも政治資金規正法関係の言及があるのが、印象的(当然のことだが)。敢えて言うなら、規制業種については、業法規制があるということは一言触れておいても良かったのかもしれない。当然すぎると言えば当然のことではあるのだが、業界外から社外取締役になられる方にとっては、当然ではないかもしれないので。
  • 資料集については、総会の決議事項の定足数・議決要件や、会社法・金商法に基づく取締役等の罰則一覧は、条文で探すのが面倒に感じるところなので、こうしたまとめがあると個人的にはありがたい。また、会社法用語の用語集は、定義が条文上どこに記されているかの記載が個人的には重宝するような気がした。定義規程(会社法2条)以外のところに定義がある用語については、探したいときに探すのが面倒なこともあるので(e-govとかで検索すればよいのかもしれないが)。

*1:会社法の「最初の一歩」という意味では、川井先生の本が良いと感じるのだが、その次に本書に目を通すのは、良い手なのかもしれないと感じた。

*2:細かいことをいえば、景表法のところでは、不実証広告記載についてもあった方が良かったのではないかと感じた。