一通り目を通したので感想をメモ。会社法の「最初の一冊」としては良い一冊。
最近の会社法の入門書としては、川井先生の本が思い出される。川井先生の本を読んで、入門書はもういいかなと思って、本書には手を伸ばしていなかったが、某二次妻・無双御大がBLJのレビューで取り上げたり、他の方もこの本を高く評価しているのに接したこともあり、手に取ってみた。
本書は、川井先生の本よりも、分量はコンパクト。会社法のコアになる部分が如何なる考え方に基づいているのかに重点を置いて、歴史も踏まえつつ、細部を大胆に落し*1、たとえも交えて、読者の理解を促している、というのがこちらの印象。文章もかなり砕けた感じで、学者の方の書いた入門書という意味では、プレップ労働法*2に近いものを感じた。そうした点が奏効して、読み易く理解しやすい内容になっているのではないかと思う。
本書では、会社法をファイナンスとガバナンスをみちしるべにして理解しようとしているが、個人的にも司法試験の勉強の過程で会社法を大別してそのように理解していたので、納得感が高かった*3。そういう風に見ると会社法が理解しやすくなると思う。
これから会社法を学ぼうというのであれば、この本を読んでから、川井先生の本を読むという形で会社法に近づいていくというのも、良いアプローチの仕方なのではないかと思う。枝葉の部分よりも幹になる部分をまずしっかり理解してから、より細部を理解していくことで、変に混乱するのを避けられると思うので*4。
敢えて難点をあげれば、この本を読んだ後の読書案内、というのが欠けているところ。個人的には、この次には、川井先生の本、そして、その次は、条文に対する距離感を考えて所謂紅白本*5、あたりが良いのではないかと感じる。いずれにしても、本書については、適宜内容を更新して、長く読み継がれてもらいたいと感じた。