本当に君は総理大臣になれないのか (講談社現代新書) / 小川 淳也 (著), 中原 一歩 (著)

前にも書いたように、直接小川議員と接点があった立場なので、多少贔屓目に見ている部分があるかもしれないが、氏の、政策体系、政治的立ち位置等をある程度把握することができる一冊。個人的には、実現可能性は不明確だが、彼が首班になるのを見てみたいと思った。

 

映画がストリーミングとかでも見られるようなので、氏に注目が集まる状態が続いていることは、氏の考えがこういう形で広く伝わる機会が得られたのは、氏にとっても良いことなのだろう。

 

氏の旧著(絶版のようで、こちらも見たことはない)の記載を前提に、氏の考える政策転換とその実施方法について、語られているのが本書の一つの柱といえる。相当練り込まれている印象で、ここまで永田町の政治家が考えているという事実自体が、まず評価すべきであろう。個々の政策の当否について論じられるものがこちらにはないのだが、少なくとも、人口動態の変化に基づく、政策転換の必要性については、同意する。その必要性を正面から認めるところから、すべては始まるはずだと思うのだが、そこからしてまだ認識の共有が十分にされているという気がしない。

 

もう一つの本書の柱が、政治家としての氏がどのように形作られたかという点を紐解くもので、この点は、上記の映画では不十分ではなく(もっと他のところに重点が置かれていてそれはそれで意味があったから映画の罪ではない)、本書の意義あるところというべきだろう。同時代に同じ学部にいたものとしては、サークル活動などで遊んでいただけに等しい(それはそれで僕にとっては有意義だったと確信しているが)こちらとは、志の高さが違うと、感服せざるを得ない。

 

 

本書について、残念な点があるとすれば、氏の共著者の方が腰が引け気味に見え、おそらくこの種の本を手掛けるには不適切なのではないかと感じられた点。

自己を律し、修行僧のように政治活動を続ける氏に対して、それでは政権を取れない、政治家にも向いていない、という方向の記載をしてるが、こちらの目から見れば逆で、氏は、「修行僧」を貫いているからこそ、ここまで来られたのだし、その自律がなくなれば、その他の凡百の永田町政治家と何ら変わらなくなり、結局政権を取ることもおぼつかないと思う。むしろ、このままブレずに政治家を続けてほしい。それで政権がとれなかったとしても、氏の力不足だけの問題ではなく、氏をその地位につかせることのできかなった有権者側の問題でもあるのだから。もし志半ばで永田町を去ることになったとしても、その方が、中途半端な変節をするよりも、悔いは残らないと思う。その場合には、御父上が指摘されているように、大学で次の世代に向けて政治の在り方を説く側に回ってほしい、そう思う。