例によって、図書館で借りて目を通したので感想をメモ。
週刊文春の連載エッセイが先般終了した。このエッセイは、氏の脳梗塞闘病期間を除けば、概ね一年分を一冊にまとめる形で続いていた。本書はその最終巻ということになる。この連載エッセイについては、図書館で都度借りるという形で全巻に目を通しているはず*1。最終巻までこぎつけて、マラソンを完走したような感がないではない。
今回のものは、前半は、氏が過去に出会った様々な著名人との出会いの記録。療養中で新しいものに接する機会が減っている時期故の内容なのではないか。氏の文章を長らく読んでいると、内容の多くは、かつて目にしたものではあるが、そういうものの中にもまったく新しいものもあったりするので、油断ならない。
後半は、通常モードに近いエッセイ。氏の代表作ともいうべき「日本の喜劇人」の決定版と冠する改訂版が出る関係で、その辺りの話も出たりしている。刊行に伴い、氏が選ぶ過去の喜劇映画の上映がなされていたのは、知らなかった。知っていたとしても、感染症禍の時期でもあって、映画館に足を運ぶのは難しかったかもしれないが、見落としていたのは悔やまれる*2。
雑誌連載の最終回のところでは、連載が終わった経緯については、言及はなく、ただ連載が終わる旨のみ記載されていた。この辺りは、単行本化の際に、「あとがき」にでも記載があるかと思ったが、それも見当たらなかった。もちろんご本人の体調やご年齢(2022年の12月で90歳。)からすれば、それだけでも十分理由になるとは思うのだが*3。純文学以外での代表作ともいうべき「日本の喜劇人」の改訂、関係深かった装丁家平賀甲賀氏の逝去、というあたりで一区切りつけたのだろうか、と推測するのだが、どうだろうか。ともあれ、何も言わないというのが、小林さんの「美意識」の現れと思うことにする。
本書刊行に際してのインタビュー(日経・朝日)を見ると、まだまだお元気そうなので、氏の今後のご健勝をお祈りするばかりである*4。