例によって、図書館で借りて目を通したので感想をメモ。
雑誌での連載エッセイを一年分まとめた、毎年恒例のもの。小林信彦さんの同形式のものも愛読しており、お二方のものはすべて一度は目を通しているはず。小林さんの方は、ご自身の体調もあってか、先般、連載を終えてしまった*1。中野さんの方は、連載が終わる気配もなく、続くようで少し安心した。
中野さんには、ぶれずにミーハーであり続ける部分があるように見えて、そういう点から、一連のエッセイをクロニクルとして読むことができるように感じている*2。僕は、それもあって読んでいるが、中野さんの文体や物事の感じ方が、読む気にさせてくれるというところも大きい気がしている。いずれにしても読むのが楽しく感じられる。
今回は、コロナ禍の期間(現在進行中でもあるが)ということもあり、中野さんも屋内に引きこもりがちで、文章も何となく元気がないような気がする。街を出歩いてナンボというところがあるのだろう。あと、思った以上に坪内祐三さんの早すぎる逝去の影響が見受けられたのは印象に残った。それなりに親しい関係にあったことからすれば、影響があって然るべきなのだろう。
読んでいて、一点、あれっ?と思ったのは、見る限りコロナの感染状況や感染対策に関する言及がほとんどなかったところ。個人的な記憶の中では、その辺りは相応の重みのある話なので、その辺りが触れられていないのが気になった。そのあたりを書いても仕方ないという判断なのかもしれないが、東京での五輪開催に対しては、そういう観点からの批判がなかったので*3、モノの見え方が違うと感じた。だからと言って批判するものではないが。
ともあれ、もうしばらくは、続編をこれまでのペース(年一回単行本化)で、拝読できることを願うばかり。次回分からは、もう少し中身から活気を感じられるようになってくれると良いのだけれど。