最近の何だか(2021/6/23)

例によって、呟いたことを基にメモ。

  • 契約交渉における契約文言に対する修正提案に付する自社側のコメントは相手方を説得しようとするために記載するのが通常という気もする。他方で、相手方を説得することも、話をかみ合わせることもせずに、相手が折れるのを待つという戦略も一定程度想定可能という気がする。その場合取引がまとまらない危険は想定しうるが、取引対象の優位性等から、相手方が取引を纏めないという選択肢を取らないと判断できれば、そのような戦略も取り得るだろう*1
    契約交渉は、有利な契約を締結する目的のための手段でしかなく、話を噛み合わせて対話をすることがその目的のために有益と想定されることが前提にあるから、話を噛み合わせようとするのであって、その前提が成り立たない場合には、別異の方法論があり得るということになるのだろう*2。契約交渉を効率化するという言説に接したが、上記の意味で、効率化なるものには、一定の限界があるのではなかろうかと感じる。
  •  NDAなんてこだわるものか、という呟きに接したが、その呟きに対する一義的な答えはなく、状況次第、としか言いようがない。拘らないといけない状況があるのも、そうでない状況があるのも事実だろう。少なくとも、自社が重要な情報を出すときで、出した情報が他社にとっても有用且つ当該他者での利用可能性があるような場合は、自社の利益保護のために、NDA上課す義務や情報の利用可能範囲(人的・時的範囲及び目的)について適切なものとなっていることに拘るべきなのではなかろうか。情報はいったん外に出したら、管理が及ばなくなって、取り返しがつかないことが有り得るのだから、自社にとって重要な情報であれああるほど、出す時点で、如何なる条件で出すかに拘る必要はあるのではなかろうか。

    事程左様に、内容の如何によらず契約書の内容にどの程度拘るべきか、というのは、その場の状況次第というしかなく、状況から切り離した一般化は危険だろう。文言が一緒の契約書が仮にあったとしても、その契約書に結実している事業をめぐる状況が異なれば、当該契約書に対する事業上の要請は異なり得る。そこから、何をどこまで拘るべきかも変わりうるから。

*1:その意味では、交渉戦術が洗練するよりも、自社の扱う商品の優位性が高く、相手方が自社の製品を購入し続けるしかない状態を確保し続けることが、最良の交渉戦略ということも言い得るのかもしれない。

*2:さらにいえば、話を噛み合わせても有利な話にならないことが確実となれば、話を噛み合わせてはいけないという行為規範も想定可能なのではなかろうか。