「取引を理解する」?

例によって雑駁な思考のメモ。
#up後にえび先生アテンドえのきさんからいただいたコメントを基に加筆した。

契約書審査に限った話ではないのだけれど、取引を十分理解することは、取引に関して法務的なアドバイスなどを行ううえでの前提となるというのは、争いがないのではなかろうか。この点、僕よりもベテランのセンパイのこちらのお言葉をお借りする次第。

 

仰る通りだけど、「理解できる」とはどういう状態になったことを言うのだろうか?。どこへ向かっていけばよいのか分からないのは、頑張りづらいような気がする。そこでちょっと考えてみた。以下、主に有体物の売買取引を念頭においてメモしてみる。

 

まず最初に出来ないといけないのは、当事者の関係図が描けるようになることだろう。当事者が誰で、それぞれがその取引の中で何をして(売り手なのか、買い手なのか、とか)、どういう順序で取引が進む、モノ・カネなどが動くのか(発注があって、受注をして、製品を作り*1、納品して、お金をもらう、という一通りの動き)を把握するということを意味する。そこには、物事の順序(納品後に支払か、納品前に内金の入金があるのか)というところも含まれるだろう。最低限これができていれば、契約審査などで大穴を開けてしまうようなミスは防げるのではなかろうか。

【追記:上記に加えて、物流(実際のモノの動き)と商流(契約関係・権利の動き)が異なる場合には、それぞれを把握すること、及び、何故相手方がその自社と取引するのか(その逆も)というあたりも把握しておきたい。】

 

その次は、自社に起こり得る自社にとって不利益な出来事は何か、を想起することだろうか。有体物の売り手であれば、納期に間に合わないとか*2、モノの出来が悪い*3とか。そして、そういう場合に、現下の取引では契約上または実務上*4どういう帰結が生じうるかということを想定できることが求められるのではないか。

 

また、その逆?としては、自社以外の取引当事者に生じて、自社にとって不利益な出来事は何か、を想起すること、そしてその出来事により契約上または実務上生じうる帰結を想起することが考えられる。まず最初に思いつくのは支払不能・倒産だろう。受領拒否・検品の遅延なども考えられるだろう。

 

さらにその次という意味では、当事者間の取引履歴、トラブル履歴、及び、将来想定される取引というあたりが含まれるのだろう。

 

これらの理解ができていれば*5、当該取引におけるリスクの所在も把握しやすくなるだろうし、その上であれば契約上の手当ての仕方についても想定しやすくなるのではないか*6

 

とりあえずこちらが思いつくのはこれくらいだけど、更にご意見があれば適宜の手段でお伺いできると幸甚です(汗)。

*1:ここには製品そのものについての理解も含まれるだろう

*2:これも理由がいくつか想定されるだろう。例えば、自社の作業が間に合わない、サプライヤーからの材料の納品が間に合わない、輸送のみが遅れて納品が遅れる、というあたりは容易に思いつくだろう

*3:こちらについても、自社の製造工程の問題だけではなく、自社のサプライヤーに起因する問題、相手方側の問題(仕様が不明確とか)など色々あり得るだろう

*4:文言上規定がないことが想定されるものとしては、そもそも次の発注がない、というものが想定される

*5:これらの理解を得るためには、法務担当者としては事業部門担当者等に質問をすることになるだろう。その際に用意すべき質問としては、以前メモしたエントリもご覧いただければ幸甚です。

*6:もちろん、想定される手当てが実際に講じられるかは、取引上の力関係なども影響するので、別異に考える必要があるのだが