僕の望みはfade out 君の望みはcut out

以下、こちらの経験に基づく体感について、呟いたことを基にメモ*1。こちらの体感に基づく話なので、異論があり得ることは付言しておく。

 

契約書の内容を見るときに、取引の相手方が当方に対して非論理的に力関係だけでごり押ししてくる状況というのは、想定したいわけではないが、当方が力関係上弱い場合または弱くなることが想定可能な場合は、想定しておかないと困るような気がする。現時点でそのような現象が見られないとしても、時間の経過で相手が非論理的に変化する(貧すれば鈍するという話もある)こともあり得るので、取引基本契約のように契約期間が長くなることが想定されているものでは、相手方からごり押ししてきたときの対応も考えないといけないと思う。そういう場合の最終手段としては、契約関係からの離脱しかないこともあるので、そのための手段は薄くしたくないと感じる。論理的に詰めて条項を単純化する(そのこと自体に利点があることを否定するものではない)よりも、ある種の冗長性を持たせた契約書であった方が良いのではないかと感じる。

 

契約関係からの離脱については、契約期間の経過で自然に満了するのと、殊更に事前通知を出して終了するのとでは、最終的に生じる法律上の効果は同じに見えるから、片方だけ実現可能であれば、もう片方を省略した方が条項が単純になってよいという見方も可能であろう。時としてそういう発想があり得るとも思う。しかしながら、その両者で相手方の受け止め方が異なることもあり得る。通知という形で文書(電子的手段によるものも含む)に書かれたものを受け取ることは、受け取った相手方を感情的に刺激する可能性もゼロではない。「寝た子を起こす」こと*2を避けつつ契約関係を離脱する意味では、前者のアプローチを取れる余地は残しておいた方が良いこともあると思う。

 

僕自身は、かつて、「寝た子を起こす」ことなく、取引基本契約の満了を待つ方法について相談を受けたことがあったので*3、上記のような心配をするわけだが、こういうことを言うと、心配のし過ぎとか言われることもある*4。とはいえ、契約書のレビューなんて、どこまで適切に*5心配をするかという勝負だと思うところ、少なくとも上記のような状況の範囲では、それほど的外れな心配ではないと思っているので、こうしたことは言うようにしている*6

*1:タイトルについては、中島みゆきさんの「F.O.」の一節。特段の意味はないはず。

*2:相互に重ならない形で複数の基本契約が存在する関係において、そのうちの一つだけを終了させて、その余は残したいときに相手を刺激して残したい契約関係に悪影響を生じさせる可能性を減らしたいということもあり得るように思う。

*3:当然のことながら、その下で個別契約が成立しないように、発注は来次第理由をつけて全部断るよう助言した

*4:この辺りは、自分の経験に基づきどこまで想像をできるかというところにかかっていて、この点は個人差のあるところなので、他人と話が噛み合わないことが有ってもそれはそれで仕方ないところだと思っている。

*5:過剰になるのも過少になるのも同様によろしくないことはいうまでもない。

*6:こちらのブログとか呟きについても見ている方がそれなりにいるので、変に影響が生じないよう注意すべきとも感じる次第。自意識過剰ではあるが、どなたかにご迷惑をかける事態が生じるのはこちらの本意ではないので。