Practical Tips on How to Contract: Techniques and Tactics from an Ex-BigLaw and Ex-Tesla Commercial Contracts Lawyer / Laura Frederick (著)

一通り目を通したので感想をメモ。ある程度英文契約について慣れた人が読むと有益なのではないかと思う。

米国におられるznkさんのblogで紹介されていたのを見て、興味を覚えたので購入したもの。内容についてはznkさんが的確にまとめられているのでそちらをご参照あれ。

blog.livedoor.jp

 

著者のlinkedinでのコラム(今も継続中)が基になっていて、一つ一つが1ページに収まっているうえに、それぞれが独立しているのでどこから読んでも良く、さらに、文章自体も平易*1なので、とっつきやすく、法律英語をある程度学んで、実際に英語で法律関連の本を読もうという人にとっては「最初の一冊」としてはお手頃な分量・難易度といえるといえるかもしれない*2。もっとも、内容自体は英文契約についての経験に基づくtips集なので、ある程度英文契約に慣れていないと、理解はしづらいかもしれないけど。

 

印象に残ったところを順不同でいくつか箇条書きで挙げておく。

  • 契約書を起草する際に訴訟等は想定するものの、契約書の主たる読み手として想定するのは裁判官・仲裁人ではなく、当事者の経営層という点(つまり、契約書について紛争が生じても、訴訟等に至る前に当事者の経営層同士での交渉による解決が図られることの方が多いだろうという読みが裏にあるのだろう。リスクアプローチではないが、発現する可能性の低いリスクについて過度に心配しすぎることの問題点を指摘していたことも踏まえると興味深く感じた)。
  • 義務を示すのにwillを使うかshallを使うかという論争については(そういうものがあるらしい...)、どうでもいい、その点に拘るより先にもっと重要なところがある、と切り捨てている点。
  • effortsの水準についての議論も、内容が不明確でも当事者が合意できるなら、不明確さにより生じる不利益よりも、合意できるメリットを取るべきだとしている点。
  • 契約書の審査の際には仕様書やScope of Worksもきちんと見るべきという点、しれっと保証制限に関する文言が入っていたりする点などを理由としている。この点については、こちらも同意する。

*1:legaleseといわれるような専門用語はなかったように思う

*2:もう一冊挙げるなら、邦訳も出ている"Working with Contracts"あたりになろうかと思う。なお、この本について、先日紹介した某書ではLegal Englishの標準的なテキストとして挙げていたが、適切とは思われない。あくまでもdraftingの本と見るべきと考える。