例によって雑駁なメモ。
何かことを起こす際に、いくつかの段階を踏んで事態が進展することがあるし、その進展に応じて契約関係を証する複数の書面*1を締結する事がある。そうした場合に、後の方で締結する書面は、それまでに書面化されたものを前提として締結されることになる。ということは、初期の段階で締結した書面について、不備があると*2、後で「祟る」ことになりかねない。
そうなると、初期の段階で締結する書面の内容を検討する際には、その後に何が起きるか想像力を働かせて*3、考える必要がある。つまり、目の前の契約書面に化体されている取引*4だけではなく、その取引を実施した後に生じるであろう事態、取引も想定しておくことが時に必要となる。一連の取引をすべて含む、大きな絵を頭に描いてみることが重要と感じるところである。
NDAで考えてみよう。NDAを締結して終わりということは本来的には想定されていない*5。購入商品選定のために、公にされている仕様書に記載以外の詳細な情報を開示するためのものであれば、その後に(選定されるのが前提として必要になるが)商品の購入契約書類*6が控えているはずだし、共同開発がうまくいきそうか検証するために、自社の技術の「さわり」を教えるNDAであれば、そのあとは共同開発契約が控えているし、さらに開発がうまくいった後の商品化のための契約が控えているかもしれない。NDAの締結に際しての検討などを行う場合に、こうした先行きをどこまで想定して考えることができるかというのは重要と考える。共同開発前提のNDAに基づき開示した情報で発明などがなされて、その扱いについてのNDAにおける定めが緩かった結果、発明を相手方が独占し、共同開発が相手の単独開発に終わってしまうような例*7を考えれば、当初の契約検討の重要性は理解しやすいのではないだろうか。
とはいえ、この点を年次が下の人に教えるのは容易ではないので、どうしたらわかりやすいかは、時折悩むところである。
*1:電磁的なものも含む。以下同じ。
*2:結果的に「不備」と評価されるものが、事前にすべて予見可能とは限らないので、回避不能なものが一定数あり得ることには留意が必要だろう。
*3:一歩間違うと妄想になりかねないのはいうまでもないが、その辺りをどこまで厳密に考えるかは、状況次第かもしれない。
*4:取引だけに限るべきではないが、その点はいったん脇に置く。
*5:時折話題になる取引関係開始のための「セレモニー」としてのそれは脇に置く。NDAの本来の使い方ではないだろうから。
*6:発注書・請書を取り交わすだけでも契約であるし、これらも契約書類といえることは言うまでもない。
*7:説明のための極端な例であることは付言しておく。