プレップ労働法(第6版)/森戸 英幸

第5版も読んだのだが,新版*1も読んだので,感想をメモ。

労働法は,分量が多すぎるということもあって,司法試験の選択科目にもしなかったし,それもあって,これまでも,法務の仕事の中で必要な都度断片的に勉強したことはあっても,全体を体系的にきちんと勉強したことはなかった。とはいえ,企業法務分野の弁護士としては,いつ何時案件が降ってきてもおかしくない分野の一つと認識している*2ので,入門レベルの知識のアップデートは必須,と考えている。また,いわゆる「働き方改革」についてどの言及がどの程度あるのか,というのも気になって,本書を手にとった。

 

とはいうものの,「働き方改革」については,「第6版のはじめに」で少し言及がある程度だった。言及のトーンも,割に懐疑的な感じで,いずれについても,やや驚いたけど,改めて考えると,「ざっと読んでとりあえず労働法の全体をさっと把握する」あるいは「さっと読んでとりあえず労働法の全体をざっと把握する」,という本書の初版以来の立ち位置からすれば,言及の程度はそんなものなのかもしれないし,懐疑的な感じについては,専門家からすればそうなのかもしれないと感じた*3

 

第6版でも前記の立ち位置は踏襲されている。要所要所でありそうに見える会話が盛り込まれていて,それ以外の部分も気楽な感じで書かれていて肩が凝るような感じはしないのがまず素晴らしいと感じるところ。前記の入門書の立ち位置からすれば,そういう感じであるべきだと思うので。それと,細かいことに立ち入らずに,全体の分量を新書版で300p程度に抑えつつ,読者に適切なイメージだけを持たせるというのは,これもなかなか難しいのではないかと思うし,そこは成功しているのではないかと思う。その辺りが改版が重ねられている理由のひとつなんだろうと思う。個人的にはこの調子で,もう少し詳しめの,それこそ水町労働法くらいの分量の教科書を出してもらいたいと感じるのだが…。

 

*1:今回から「リアップ労働法」にするんじゃなかったのかよ,というツッコミはなしで(謎)。ついでにいうと,「第6版のはじめに」にあるツイッターdisもなかなか来るものがある。

*2:案件が降ってきた際には,通常の場合は,菅野労働法を買いに行って,逐一それを調べながら対応していくことになるものと想像していて,それでもなお手に負えそうにないと判断したら,詳しい先生にお願いすべきなのだろうと感じているところ

*3:個人的にもそういう印象ではあるが…