一通り目を通したので感想をメモ。景表法の「最初の一冊」としては良いのではないか。
独禁法、下請法、景表法と、所轄官庁の方の書かれた「はじめて学ぶ」シリーズ*1の一冊。独禁法と景表法については、同じような見た目の厚い本があるが、そうした厚い本に入る前の一冊というところか。
こちらは、いるのがB2Bメーカーということもあって、景表法はあまり業務上出くわしたことがなかったこともあり*2、景表法の本というのは目を通したことがなかったが*3、それもどうかと思ったので、今回「はじめて」シリーズの本書を手にしてみた。
全体として170頁程度で景表法の全体像を鳥瞰している。
「はしがき」では本書の狙いについて次のように書かれている。
条文ごとの細かい文言の解説や過去の事例の紹介ではなく、はじめて景品表示法に触れる方が、そもそも法律を理解するに当たっての基本的な視点であるとか、景品表示法の趣旨・目的・価値観を理解いただけるような教科書を書けないかとおもったのが本書執筆に至った動機である。
確かに細部の細かい解釈論などは少ないかもしれないが、こちらが一読した感じでは、上記の狙いは達成されていると感じた。事例も相応に紹介されているが、上記の狙いを達成するために紹介されている感じで*4コンパクトな分量で、手続き面も含めた景表法の鳥瞰が出来ているのではないかと感じた。
また、官庁の人が書かれた本というと、ややもすると、無味乾燥になりがちな気がするが、事例が多くひかれていることと、コラムで著者の個人的な体験が記されていたりして、そういう印象を受けなかった点もよかった。
本書で相応に全体像を理解したうえで、定番の「緑本」に行くと、分厚さにめげないのではないかと期待している。
*1:という言い方をしてよいのかわからないが。
*2:B2Bメーカーでは対消費者向けではないので、不当表示については、景表法の規制が及ばない(白石忠志 (東京大学教授)/著『独占禁止法 第3版』(有斐閣、2016年)375頁(第4版が積読山から発掘しづらいので(汗)、legal libraryにあったこちらをメモしておく)。この点についての言及は本書ではなかったが、入門書であればあり得る対応だろうか。)が景品規制については及ぶはず。とはいえ、景品を出すようなプロモーションをすることがあまりないので、結果として仕事上は出くわす頻度は少ない。
*3:景表法について言及がある本という意味では、松尾先生の広告法務の本の基本編と実践編には目をとおしたことがある程度。
*4:白黒でも相応の解像度で示されていて、老眼世代でもストレスを感じない程度にはなっていた。この点は地味に評価したいと思う。