一通り目を通したので感想をメモ*1。企業内法務であれば、前著の基本編ともども手元においておいて損のないものといえる。
筆の速い松尾先生*2が、広告会社の依頼者からの相談事例に基づき*3、広告に関する法務について、より実践的な、相談事例の解説をしている。
広告に関する法務は、景表法、著作権法、商標法や個人情報保護法などにまたがり、個別に理解することももちろん重要であるが、こうした横断的な形での解説があると、特に急いで回答することが求められる時に助かるのはいうまでもない。横断的な解説は前著(基礎編と称されている)でも同様だが、本書は実践編と銘打って、より突っ込んだ、より実務に近い話が取り上げられており、前著での説明を踏まえて(その分参照指示が細かく付されている)、全体としてはコンパクトにまとめられている。内容的にも、景表法改正やステマ規制、SNSの使い方、AIの利用法、メタバースの対応など、より「旬」の話題にも触れられており、特に、「旬」の話題については、ガイドラインなどでも追いついていないところは、雑誌記事や論文迄丹念に追いかけて、そのうえでコメントを書かれており、実務での有用性も高いのではないかと感じる。
また、前著同様に前著及び本書の契機となった広告会社の法務の方のコラムも引き続き掲載されており、そちらも、実務の悩みについてのコメントがなされており、それも興味深く読むことができる*4。
広告会社に限らず、事業会社であれば何らかの形で広告宣伝をすることが通常と思われるので、その意味では、どの会社の企業内法務にとっても関連のある内容と言えるのではないかと思うし、上記の意味で有用度は高いと思う。2冊とも手元において、適宜参照すると有用なのではないかと考える。願わくは、今後も諸々の状況の進展に応じて適宜改訂を重ねていただければと思う次第。