国立大学教授のお仕事 ――とある部局長のホンネ (ちくま新書 1852) / 木村 幹 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。個人的には面白かった。

 

オリックスへの一方ならぬ愛情*1と日常のボヤキでtwitter上で知名度が高い*2木村幹先生が、ご自身の経験を基に、国立大学教授の仕事ぶりについて説明する本、というのがこの本のざっくりとした紹介なのだろうか。神戸大という旧帝大ではない*3大学で、人文社会系の研究者という立ち位置の制約はあるものの*4、大学の外からはうかがい知れない大学教授のリアルな生態(?)について接することができるのはそれだけで十分面白い。

 

とはいうものの、そのお仕事ぶりは想像以上に大変と感じた。肝心のはずの研究者としての自分自身の研究活動については、ほとんど語られず、それ以外の仕事について語られるわけだが、この国の力の低下などに伴い、入手可能な資源が減っていて、それを埋め合わせるための資源を入手するために、取らなければならないあれこれの手段が淡々と、かつ、赤裸々に語られている。その中には「コップの中の嵐」とでもいうべき、研究者同士の不毛ともいうべき争いもあり、その辺りが想像していた以上に重い負担に見えた。こんなに負担が重いのでは肝心の研究ができないのではないか。何だか本末転倒していないか、そう感じた。淡々と語られているので、それほど暗い気分にはならないのだが。

 

他方で、それでも著者はご自身の仕事について良い面も見ようとしていて、それが最後に語られている。語られている内容からすれば、確かにそうだろうと思うし、併せて語られる「成果主義」の行きつく先は、確かにそうなりそうだと感じる。

 

昨今の情勢を見ると「学問」が成り立たなくなる可能性も感じなくはないし、そういう懸念を考えるうえでも、一つの「現状」を理解するうえで、本書を読んでおいてもよいのではないかと感じた。

*1:野球観戦の趣味等についても言及がある割に、球団名が一切本書では明かされないので、個人的には、オリックスがかわいそうな気がした。変な方向に読者の関心が逸れないようにという事なんだろうとは思うが...。

*2:少なくともこちらはそのように認識している。

*3:そのことで生じる問題点についても言及がある。旧帝大との格差があることは想像していたが、想像以上に格差は大きいように感じた。

*4:ついでにいうとn=1という話もある。もっとも、ご自身の立ち位置から見えることに限って書かれているからこそ出てくる切実さというものもあるのではないかとも感じた。