声の上げ方について

時事ネタについては、何かを言うことは少ないけど、気になったことがあったので、備忘のためにメモ。

 

某大学で、学生に対する種々のハラスメントにより教授が諭旨解雇となった事案があった。そのような懲戒処分の契機となったのが、学生側がSNSに当該教授の言動の音声データなどをあげたということであった*1

 

個人的に気になったのは、問題行為の相手方の学生がいきなりSNSに話をあげたところ。相談窓口などが学内にあるはずなのに、そちらに行かずに、SNSに、というのは、イマドキなんだろうとは思う。大学の窓口よりもアクセスしやすい(スマホさえあれば時間と場所を気にする必要がない)から、手軽であろうことは想像に難くない。

他方で、このことは、大学側としては、事前の予防策を講じることはできても、一旦何か起きたら、自浄作用が働かない可能性がある上、事態が「炎上」する可能性があるということになり、これはこれで怖い話だなと感じた。やり方を間違えば、声をあげた側の学生にダメージが生じる可能性もゼロではないだろうし。

 

この辺りを企業に置き換えて考えてみる。こちらも現職では内部通報制度の運用にも一部関わっていることもあり、そういう観点から気になったのだった。

よく言われることだが、一旦インターネット上に情報をあげられると、その完全消去は難しいし、いつまでも蒸し返される危険がある。また、仮に正当な訴えであったとしても、上げ方次第では、訴えの内容との関連性に疑義があるような情報で、外部に出してほしくないものまで出てしまう可能性もある。就業規則上の守秘義務があることがどの程度そうした可能性を減らせるのか、疑問なしではないだろう。

リスク管理という意味では、回避可能な損害は避けたいところだし、そういう意味では、不用意に外部に情報を晒す前に、何とか内部で声をあげてもらえるようしたいところ。そういう意味では、「中の人」としては、内部で声をあげることをしてもらえるよう、体制を整えるとともに、その体制の存在と運用実績を周知して*2、そちらに誘導するよう心しなければならないと感じた。

*1:個別の事案の詳細をいまさら部外者がどうこういう気はないので、リンクなどは貼らないでおく。個人的には漏れ聞こえてくる情報が正しいのであれば、処分は不当ではないように見えるのは確かだが。

*2:昨年施行された改正公益通報者保護法の下では、一定規模の企業ではそうした体制を整えることが求められているはず。