Q&A 善管注意義務に関する実務 / 岡本 直也 (著)

 

一通り目を通したので感想をメモ。発想は面白いと思うので、もし手元にあると有用ではないかと感じた。

 

善管注意義務というわかったようでわからない概念が出てくる裁判例を業種別・ケース別に解説した一冊というところだろうか。善管注意義務というと会社の役員の責任についての解説とかは見なくもないが、それ以外も含めて広範に解説した本というのは確かに見たことがないので、そういう意味で、類書のない貴重な一冊ということはできるのかもしれない。

 

構成としては、序章で総論的なイントロが手短に語られ、第1章では、委任契約等に基づく善管注意義務全般についての解説がなされる。その中での総論の後で業種別(士業は除く)の善管注意義務の解説がなされる。各章ともQA形式で、A自体は、簡潔過ぎて正直どこまで役に立つかなという気がしないでもないが、その後の解説で、(裁)判例が判旨も引用しつつ紹介されている。

次いで第2章では役員に関する善管注意義務についての解説がなされる。株式会社以外の法人の役員についても紹介されるうえ、金融機関の場合や労働問題への対応などケース別の解説もなされている。

第3章では、システム開発・運用等に関する善管注意義務が説かれている。この分野についてはIT系に詳しい先生方の手で別書があるが、さわり、を知るという意味では価値があるのではなかろうか。

第4章では、特定物の引き渡しに関する善管注意義務が説かれている。業種別・ケース別の解説もあり、駐車場とかスポーツクラブで何かが起きたときなど、業務以外で日常生活で関係が生じた場合に使えそうな知識が得られるように思う。

最後の第5章では、専門家に関する善管注意義務について説かれている。残念ながら(?)中小企業診断士については、言及がなかったが、相手が中小企業ということもあり、訴訟にならないのかもしれない。弁護士については、自分がトラブルに巻き込まれないようにしないといけないと思いつつ読んだ。そのほかには司法書士さんや税理士さんについては、お金に直結する話を扱うだけあって、大変そうだなと思いながら読んだ。

 

全体で約300頁と通読可能な程度にまとめられているので、個々の判旨の紹介は簡潔に過ぎる感もあるが、その分、原文へのアクセスが可能な程度の情報は記載されているので、詳細は原文を当たって確認するという前提で読むのが良いのではないかと考える。関係法令・ガイドラインへの案内や文献の案内も一定程度ついているし、コラムも面白いので、リサーチの手掛かりとして手元にあっても有用ではないかと感じた次第。