税という社会の仕組み (ちくまプリマー新書 456) / 諸富 徹 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。税というものの基本を考えるうえでは読んでおいて損のない一冊かもしれない。

 

税というといずれにしても鬱陶しいし、税法は面倒そうということで、いずれにしても、こちらにとっては積極的にかかわりを持ちたいと思うものではないものの、避けては通れない。本書は専門的・技術的な話は最小限にして、税という制度の仕組みについて説明し、税についてどう考えるべきかの視座も示してくれている。全体が250頁ほどなので通読も可能な分量である。

 

第1章では、税金とは主権者が選び取るものという指摘が出てくる。西洋での税をめぐる歴史からすればそういう見方になることも示されてはいるが、なかなか腹落ちしない感はある。
第2章では、西洋での歴史を概観する。税をめぐる争いの中から税を勝ち取った英米とそうではなく上から税制が定められたドイツとの対比が興味深い。

第3章では、日本の税制の歴史を概観する。ドイツ同様に下から税金を獲得したのではなく、上から税制を整えたことの副作用として、日本では自発的納税倫理が育っていないとの指摘に納得する。

第4章では、税をめぐる現代的な事象への言及がある。経済のグローバル化への対応、多国籍企業への対応などが解説される。新たな国際課税ルールの解説が分かりやすく感じた。

第5章では、まとめとして、今後の展望というか、主権者として税にどう向き合うべきかというあたりが説かれる。時代の変化の中で主権者として、税を一つの手段として、どういう社会を選び取るかということが重要ということが説かれる。

 

高校の世界史の授業で、代表なくして徴税なし、というフレーズがアメリカ建国に際して説かれたことは聞いていたが、税をしたから選び取る過程でそうした表現が出てきたことまでは思い至らなかった。そういう経験のない日本では、税金は、お上から取られるものという意識が強く残り、税金の使い道を選択する、使い道を監視するという点を意識する機会が、少ないと感じる。本書で指摘されているように、欧米との比較では、税に関わる政策立案時に有効性を検討する過程も整っていないうえ、使いみちを監視をする機関も制度的に整っていないから余計にそうなるのかもしれない。言うほど簡単ではないが、もう少し税の使い道についても関心を持たないといけないのだろうと、ということを感じた。