月刊法学教室 2023年 10 月号

例によって目を通せた範囲について、呟いた感想を基にメモ。先月今月は、諸般の事情で全部には目を通せなかった...。

  • 巻頭言については「『である』ことと『する』こと」の教科書での扱われ方についての指摘に驚く。書かれた年代との距離感からすれば仕方がないのだろうが。
  • 法学のアントレは法学×文化芸術。最後の方の「キモヲタ」になろうという主張はやや面喰うが趣旨は理解はできる(直ちに賛成できるかどうかはさておき)。最後の段落の締めかたにはある種の様式美を感じた。
  • 学校をホウガクするは、懲戒。懲戒を受ける側の視点からの視点が前に出た文章で、いじめとかを受ける被害者の視点から見たらどうみえるのかというあたりが気になった。
  • 特集の一つ目は現在注目の論議から学ぶ行政法。斎藤先生の全体を鳥瞰するイントロのあとは、巽先生のデジタル社会における行政手続の原稿。解釈論が興味深いけど件の法律が拙速な立法で規定ぶりがダメだっただけの話なのではないかという印象が残った。
    中嶋先生の、縮小社会における「参加の行政法」は、「参加」に関する議論も興味深かったが、後半の縮小社会と参加の部分も、初めて接する内容で興味深かった。ただ、縮小社会の中で「参加」できるだけの時間等の余裕のある人がどの程度いるのかというところは気になった。
    天本先生の、情報秩序における公表という手法、では、司法的救済の相場観みたいなものの分析が興味深かった。手法の使われ方が胡散臭く見えるので、手続的統制の充実が必要なのではないかと感じた。
    髙畑先生の一元的司法制度のもとでの訴訟選択は、註17での指摘に納得。門前払いめいた話が多いのが適切とは考えにくい気がするので。
    近藤先生の国家賠償制度の特質と個人責任・求償については、萎縮効果の防止という理由づけから見た個人責任・求償の実情が興味深く感じた。私企業における同様の行為についての責任のあり方との均衡も重要ではないかと感じる。
    この特集は、最近こういう議論があるのか、ということが分かるので個人的には面白く感じた。
  • 特集その2はトピックで考える租税法。イントロの後は、インボイス制度の導入について。何が問題となっているかの説明は租税法の枠内での説明という感じで、他の法律も踏まえた解説がされるべきという気もしたが、紙幅との関係でそこまでは無理ということなのかもしれない。
    法人の租税優遇措置、については、「優遇」の解説が興味深いが、解説の前提部分に説明がないところが多いような気がして、学部生向けの特集として適切なのか気になった。
    副業をめぐる税制は、所得税について学生さんに向けて語る切り口としては良いのだろう。
    生前贈与と税制は、こちらのように相続税基礎控除額を超える遺産を親が保有していないと確信している側からすれば、生涯無縁のものという印象しかないが、最後の部分の指摘は興味深く感じた。
    BEPS包摂的枠組み、については、そういう話なのか、と思って読む(そしてすぐに忘れる)。
    特集2は、今時の話題になっているはずの話題から租税法を説くという感じだったが、あまり興味が持てないので、薄い感想しか抱けないのであった(汗
  • 国会概観は、最近の国会でこういう法律ができた(またはできていない)というのを追いかけていないので、そうなのかと思いつつ読む(個別の法律については、いろいろ懸念するものも含まれているが...)。今回は注2が興味深く感じた。
  • 講座
    会社法利益相反取引の規制。規制のわかりづらさは受験生時代にも悩んだのだが、わかりづらさを歴史的に紐解いており、興味深かった。もっとも、だからと言って分かりづらさが解消されたわけではないが。
    新連載の点と点をつなぐ不法行為判例。連載開始にあたってのコメントで学習者のリソース制約への言及があるのが好ましく思える。初回の不法行為法・不法行為責任と権利濫用は、権利濫用論について、複数の判例の変遷を通じて権利濫用という概念の役割を分析しているのが面白く感じられた。