呟いたことを基に目を通せた範囲で感想をメモ。今月と来月は2誌とも全部目を通すのは難しいが、できたところまで。
- 海外法律情報
中国の生態系保護法制の新潮流は、個別の自然資源を対象とする立法がかの国にあるということそれ自体に、失礼ながら、驚く。運用実態がどうなのかは今後の推移をみる必要があるのだろうが。
イタリアの島嶼部への支援に関する憲法改正の記事は、国民発案での改正ということに驚く。 - 書評
「近代日本の行政争訟制度」についてのものは、読みどころや課題が分かりやすく示されていて、読んでみたくなる内容になっている(理解できるかはさておき)。
「宇宙法の形成」は、外務省の官僚の方が書かれているとあるのに、やや驚く。 - 判例速報。
会社法の非流動性ディスカウントの件は、過去の最決との整合性の検討が興味深い。
労働法の経産省トランスジェンダーの方の件は、判旨IIの検討の視角は民間の労働関係における同様の法的責任でも参照されうるという解説での指摘は確かにそうだろうなと思う。
独禁法事例速報の、抽象的な情報交換からの「意思の連絡の推認」は、間接事実からの推認の仕方についての解説での分析の仕方がなるほどと思った。
知財判例速報の特許権侵害と属地主義の原則については、別件との比較は、類似している部分についての指摘はそうかなと思うけど、でも違う表現が取られた理由がないかないのかが気になった。
租税判例速報の外国芸能法人等に対して支払われた渡航費等に対する源泉徴収の要否については、この辺りの問題に行きあたったことがないので、正直問題の所在からよくわからなかった気がした。 - 特集。インボイス制度が始まる。
西山先生の原稿は、今回の制度変更のお題目というか建前はこういうところにあるのかと思いつつ読むが、納得できるかどうかは別。
藤谷先生の課税仕入れをめぐる問題は、インボイス制度でより明確に認識されるようになった問題の解説というところか。内容がどこまで理解できたかは不明だが消費税の仕組み自体に含まれる問題点ということだけはよくわかった気がする。
次の前財務省主税局の方の原稿は、お役所の方の制度概要の説明で、この特集の最初に置いておいた方がよかったのではないかと感じた。なぜそうなっていないのかは、きっと意図があるのだろうけど、そこはよくわからなかった。
金井先生の登録制度と免税点制度は、税理士の方の原稿で、運用上や移行に伴う負担・不利益についての実務サイドからの言及があるのが良い。
白石先生のインボイス制度と独禁法・下請法・フリーランス法の原稿は、論じたい点がボケないよう、枝葉に当たる部分を切り落としつつ、インボイス制度周辺の上記法律の概要を鳥瞰しているという感じだろうか。「濫用行為」の要件該当性に注目すべきという指摘には納得。
特集は、制度について不勉強だったが、結局ろくでもない制度だという印象が強まった。理念が正しかろうと実装と運用がダメなら、結局制度自体がダメと考えた方が良いのではないかと感じる。 - 海外進出する企業のための法務は安全保障とビジネス。日本企業の取るべき対応については、まあ、こうとしか書けないだろうなとは思う。
- 実践知財法務は海老原先生のファッションデザインと知的財産権。ファッション産業での実務を踏まえた解説はさすがというべき。不競法2条1項3号のクリアランスを仮に取ろうとすると、ネットで全世界のデザイン情報が出回る中では難しいのではないかという気がした。
- 新法の要点は国際合意を踏まえたミニマム課税の法制化について。グローバル企業からどの国がどうやって課税するかという問題への答えなのだろうが、仕組みがややこしくてよくわからにない気がした。こういう制度があること自体は適切なのだろうとは思うが。
- 時論の同性婚訴訟一審判決の比較検討は、横並びの比較が興味深かったし、「違憲状態」のあいまいさについての指摘や最後の結論にはなるほどと思った。