会社法入門 第三版 (岩波新書 新赤版 1969)/ 神田 秀樹 (著)

遅まきながら、購入から1年後にようやく一通り目を通したので感想をメモ。会社法の入門書としては悪くはないのかもしれない。

 

改訂頻度の高さから加除式にすべきという説のある(謎)、弘文堂の会社法でおなじみ?の神田先生の会社法入門書の第三版。初版が出た時には目を通していたのだが、2007年とかの話で、既に忘却の彼方にある。その頃よりは会社法に対する理解ははるかに深まっているはず(と思いたい)だが...。

 

会社法を新書版で300頁弱で解説するもので、最初2章は会社法のこれまでの歴史ということで、2005年の会社法制定までを第1章で、その後の2度の改正について第2章で解説している。第3章から5章までが会社法の解説で、第3章が機関、第4章が資金調達、第5章が組織再編を解説している。章ごとに最初の節で章の要点が述べられている(第5章は節ごとに内容が異なるので、各節の冒頭で要点が述べられている)。最後の第6章は今後の展望が説かれている。

 

条文数も膨大で文字量も多い会社法の基本をコンパクトに、時には簡単な設例を用いつつ要領よく解説していて、枝葉の端折り方からして参考になる。ここ数年の敵対的買収事件に対するコメントも興味深い。また、今後の展望について、次のようなパラダイム転換を期待する旨述べておられるのも、なるほど、というところ。

今日のDX環境と変化しつつある株式市場環境のなかにおける株主の基本的な権利は何であるべきかを整理し、その保護を法制上確保したうえで、会社の活動を事前に制約するような規制を撤廃することである。

 

他方で気になった点を一つだけメモしておくと、会社、特に上場企業を取りまく法規制という意味では、機関の運営にかかわる部分だけでも、会社法に加えて、金商法や東証の上場規則等の理解が必要ではないかと感じるのだけど、それらについての言及はあまりなかった。会社法という法令について理解する入門書としては適切なのかもしれないが、法曹、企業内法務の担当者のような方々以外の世間一般の方々にとって、単体の法令についての入門書に対してどこまでの需要があるのか、という点が気になった。会社の機関運営に関わる基本的な法律の入門書という意味では、特に上場企業との関係では、上場会社法、みたいな形で、先に挙げた会社法以外の法令も一体として開設する本の方が、良いのではないかと感じた。