倒産法入門: 再生への扉 (岩波新書 新赤版 1866) / 伊藤 眞 (著)

「蝶ネクタイ」*1伊藤教授の本。新書版150頁ちょっとで倒産法を鳥瞰しようというもの。前書きを見ると今回の感染症禍の中での倒産事件の増加を想定してのことと思われる。その想定は時宜に適ったものといえよう。

 

内容としては、総論的な第1章の後は、4つの手続(破産、民事再生、会社更生、特別清算)についての概説があり、その後、4つを横刺しで見るような形で、手続開始による法的関係の変容、否認権、担保権と法的整理、相殺、といった重要なテーマについての解説がなされている。

 

紙幅が限られているので、極めて大づかみな話が多いのだけれど、こういう鳥瞰を踏まえておくと、先行きの見通しが良くなるのではないかと感じる。また、条文がこまめに引かれているので、逐一条文を追いかけながら読むと理解がさらに進むと思われる*2

 

個人的には、似たようなことが、手続の種類によって異なる扱い(別除権の扱いとかがその例)がされているときに、その理由の説明がなされているところが興味深かった。

 

一点気になったのは、法曹以外の読者を想定していて、専門用語とかについては適宜解説を加えるなど配慮しているものの、参考文献として、著者の分厚い基本書とさらに分厚い条解破産法をしているところ。法曹相手なら許容されるとは思うけれど、非法曹相手にそれはどうなんだろうと思わないでもない。この新書の次、という意味では、もう少し「お手頃」なものを示すべきだったのではなかろうか。この辺りは、著者のみに帰責する話ではなく、編集側の問題なのかもしれないが。

*1:某予備校の先生との区別が必要という話がある

*2:こちらは移動中とかに読んでいてそこまではしなかったが