破産再生のチェックポイント (実務の技法シリーズ5) /髙中 正彦 (著, 編集), 安藤 知史 (著, 編集), 木内 雅也 (著), 中村 美智子 (著), 八木 理 (著)

 

一通り目を通したので感想をメモ。

 

例によって最近流行り?の若手弁護士向けの書籍によるOJTのシリーズのうちの一つ。倒産法周りの若手弁護士向けの本としては、他のシリーズの書籍にも既に目を通しているが、2冊を比較した限りでは、最初に手に取るべき本という意味では本書の方が良いのではないかと感じた。

 

理由としては次のとおり。

  • 文献案内があること。特に破産・再生に関しては、東京・大阪地裁については、一定の標準のお作法があり、それをまとめた本が出ているので、そこをまずは参照すべきものと思われるが、それらについての案内があり、さらにその他にも必要に応じて紐解くべき書籍が示されているのは、おそらく有用だろうと考える(もちろん、他の手段で補完できるのであれば、この点を重視する必要はないのだろうが。)。
  • 倒産法制の中で破産・保全以外の手続きの選択肢も示されていること。取るべき手続きは、依頼者の意向も踏まえつつ、諸般の状況に鑑み、依頼者の利益に最も叶うものを選択すべきものと考えるが、そもそも取り得る手続きにどういうものがあるのか、それぞれにどういう特徴があるのか、がわからないと選びようがない。その意味で、本の表題とはややずれるものの、破産・再生以外の手続きの概要の紹介も含まれている点は、良いと感じたところ。
  • 特に受任から、手続き開始のあたりのところに焦点を絞って、申立人代理人に対して、注意点も含めた解説をしている点。時間勝負の要素の特に強いところについて、丁寧に解説してくれているのは良いと感じたところ。弁護士倫理の問題が生じやすいところでは、その点についての言及もあるのが好ましいと感じた。

他方で、上記の裏返しで書かれていないこともある。こちらについては、破産手続きだけに焦点をあてた、先に読んだ本の方で補完できる部分もある(別にこの本で補完するしなければならないというわけでもないが)。

  • 破産については、管財業務に関わることは、書いていない*1。これは、管財人業務が一定の経験を積んでからでなければ受任することはあり得ないから、ということなのかもしれない。文献案内にもある「破産管財の手引き」を見てほしいということかもしれない。また、1年目とかでも管財人代理をするようなことは考えられるが、その場合は管財人に指導を求めることができるから、という前提なのかもしれないが。とはいえ、本の表題からすれば、そのあたりについても言及があるかの如く読めるのも事実なので、その点は、「はしがき」あたりで一定のコメントがあっても良かったのかもしれない*2

 

*1:民事再生についても手続き開始決定後のことについても同様である。

*2:本来は破産再生申立のチェックポイントと表題をした方がよいのだろうが、シリーズ全体でのバランスを考えてそうしなかったのかもしれないと感じている