若干の感想

一部で話題のこちらについて、呟いたことなどを基に若干の感想をメモ*1

押印についてのQ&A

 

最初に目を通した時の感想としては、読み手にどこまでの能力を想定しているのか、今一つよくわからない気がした。というのも、司法修習で所謂二段の推定等について*2うるさく言われる経験を経た法曹であれば、あの程度当たり前なのではないかと思うわけで*3、そういう意味では、法曹相手であれば、この文書を殊更に出すことが必要だったのか、という点からして疑問に思った。

 

他方で、それ以外の方々を読み手として想定するのであれば、説明の言葉が足りているのか、というところが今一つわからなかった。原則論に言及しておきながら例外についての説明がない(書面を要求という点では保証とかが例外だろう。押印については何があるだろうか(僕はすぐには思いつかないけど))のは誤解を招かないか懸念を覚えたし、「推定」の意味合いとかの説明も一応あるけど、あれで足りているのか疑問が残った。もっとも、そもそも一つの取引について、単体の契約書ですべてが完結するなんてことは寧ろ稀で、それ以外にも契約締結の前後で種々のやり取りがなされることが通常と思われることからすれば*4、契約書に多少不備があっても、契約の存在及びその内容についての立証手段は他にも色々考えられるはずというのは、ちょっと考えればわかるのではなかろうかとも思うのだが。

 

それと、純然たる民法・民訴法あたりの議論からすれば記載のような整理になるだろうということは理解可能としても、この種の問題についての議論の中で、内部統制とか経理税務の観点から書類に押印したものを求められる場合があるという指摘に以前接したのだけど、そういう観点から見た場合に、今回の文書で十分対応できているのか、についても、疑義が残った。まあ、そこまで対応しようとするのであれば、今回の文書の3省だけではなく、国税とかまで含めた調整をしたうえで発することになるのだろうけれど。

 

追記)この文書についての戦士さんのエントリに接した。こちらもぜひお読みいただければと思いました。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

*1:例によってこちらのこれまでの経験に基づく感想なので、異論などがあり得ることは留意していただければ幸甚です

*2:実務で二段の推定には接しないという指摘も目にしたけど、個々の論者の業務の範囲とか、企業内の方であれば所属する業界とかの差異によるばらつきが顕著ということの反映なのではないかと感じるところ。

*3:実務でどの程度使うかは別にして、少なくとも現時点までは二段の推定が法曹・実務家にとって基礎に属するのは否めないところであり、そのあたりの理解が不十分なまま不用意な言説をするのは、それ自体論者及び論者の属する団体の信用を危うくするものになりかねないような気がする(何かを見た…。)

*4:社内承認処理も含めて、全部の処理を電子メールベースで残しておけば、ほとんどの場合はそれで事足りるのではないかと思う。偉そうなシステムを入れるよりも先にそういうところで対応するという発想があっても良いのではなかろうか。