存続条項について等

例によって呟いたこと等を基に雑駁なメモ。

 

契約書に存続条項なるものが存在することがある。

第16条(存続条項)本契約の終了後も,第5条,第6条,第9条,第11条,第12条,第15条の規定は効力を有する。

一例は上記のようなもの*1。要するに契約全体について効力が生じ終わった後に一部条項についてはその効力を存続させるための条項ということになろう。契約が存続期間満了等で、その効力を終えた後で、紛争が生じた際に、その紛争についても、当該契約に基づく紛争解決手段で解決したいとしても、契約の効力が残っていない以上、当該手段に拘束される謂れはない、として別異の手段を取られ手、対応がしづらくなるのは困る、例えば、そういうようなときに、こうした条項が必要になることがあろう。また、契約に基づき開示した秘密情報は、契約終了後一定期間は秘密情報として扱ってほしいというような場合もこうした条項の恩恵を受けることになろう。

 

こうした条項は、上記の例でも分かるように、存続させる条項をまとめて記載する専用の条項を設けることが多いと思われる。上記の例では存続期間は特段指定されていないが、条項単位で、存続期間を分けることも想定可能だろう。

他方で、こうした形をとるのではなく、むしろ存続対象の各条項においてそれぞれ存続する旨記載する方がいいのではという意見に接した。そうした方が目立たないという意見も見られた。言いたいことは、賛否はさておき、理解できなくはない。

しかしながら、そうした形を取ると、その契約が存続期間満了等で効力が終了したときに、その後に如何なる権利義務が存続するかについての一覧性がなく、却って探す面倒になるのではないかと思う。契約締結までのドラフティングの際の手間と、契約運用時の手間との比較の問題ではあるのだが。前記の点は契約書が数十頁単位以上のものになったときに重要になるだろう

 

こうした条項は、英文契約での実務から引き継がれたものだが、英文契約で個別に一般条項化されているものは、相応に理由があってやっているので(換言すれば、もめて痛い目にあった前例があるということ)、常に日本の契約実務に妥当するかどうかは検証が必要だろうが、批判をするなら、なぜそうなっているかは、少なくとも一度は考えておいても損はないと思う。

 

もう一つ、上記の例はひとつの典型だが、上記の例では存続する対象に、その条項それ自体が含まれていない。16条で存続する対象として16条それ自体が指定されていない。そういうドラフティングは一定程度みるが、この条の効力が存続せず効力を有しないと考えると、この条で規定されている存続対象の各条項の効力も存続しないのではないかと考える。

 

…以上、特段のオチも何もないがメモしておく。

 

 

追記:

 

上記のご指摘をいただいた。ご指摘のとおり、ドラフトをしていない人間が後日その内容を確認することも想定しておくべきだろう。

*1:阿部・井窪・片山法律事務所/編『契約書作成の実務と書式 第2版 企業実務家視点の雛形とその解説』(有斐閣、2019年)484頁より。legal libraryにあったものを使った。