残すべきものは

なんとなくオフコース風味な気がする(意味不明)。

残存条項についての話題が一部で出ていたので、一応パッと思いつく範囲でメモしてみる。思い付きの域を出るものではないが、たたき台にでもなってくれると良いのだけれど...*1

 

残存条項は、取引契約において、対象となる取引が終了した後も当事者間に当該契約上の義務の効力を残存させるための条項ということになろうか。英語でいうとSurvival Clauseということになろう。特定の条項を指定して、当該条項は、当該契約の効力終了(満了であれ、期間途中の解除であれ、終わり方は問わずに、というのが通常だろう)後も、その効力は引き続き有効、という形の規定になる。いつまで残るのか、を指定する場合もあろう。

 

残すべき対象、残すことが必要となる条項というと、売買基本契約とかを念頭において考えると、順不同で次のあたりだろうか。

  • 最初に思いつくのは、その指定をしている条項それ自体であろうか。その条項が契約の終了とともに効力が失われれば残存する旨の規定それ自体が死文化するから。
  • 次に思いつくのは、取引対象となった商品役務についての瑕疵担保または品質保証だろう。元の取引契約の効力が切れたら、品質問題が生じても何も対応しないというのでは、安心して取引ができないだろう。契約期間最終日に商品を購入したら、と考えればわかりやすいのではなかろうか。
  • 守秘義務に関する条項も同様に残すべきだろう。仮に、当該契約に基づき開示した秘密情報について、回収可能なものをすべて回収したとしても、所謂残留情報は、当事者に残るわけだし。
  • 広い意味での紛争解決に関係する条項、具体的には、準拠法、裁判管轄、損害賠償、補償に関する条項も、契約期間満了後に、当該契約に基づいて行った行為について、問題が生じた際のことを考えると残すことが必要と考える。契約期間終了後に当該契約に基づき購入した製品に品質問題が生じて損害賠償請求をすることになった場合を考えると必要性はわかりやすいのではないか。

逆に残すことが有害な事項はあるだろうか。

  • 残したら、契約終了したことにならないではないか、というものは、効力を残せないだろう。継続的な売買契約における製品の供給義務に関する条項が該当するだろう。
  • 契約終了後は義務が生じることを受け入れるものの、契約終了によって当該義務が解除されることが必要な条項は、残すと有害ということになるものと考える。知財権の非侵害の保証を仮にしていれば(その当否はさておき)、そういうものが該当するのではなかろうか。

契約期間中に効力が生じていればよく、その後は、効力があってもなくてもよい、というのはおそらく、残していても無害ということになろう。暴排条項とかが該当するのかもしれない。また、製品の供給義務を前提とした検品に関する条項等も、供給義務自体が効力を生じていなければ事実上無内容になるはずなので、効力があってもなくてもよいという理解の仕方が可能なのではないか。

 

契約期間中に効力が生じていればよいものの、その後も効力が生じていると有益という条項は何かあるだろうか。定義条項はこちらに当たるのかもしれない。個人的に定義条項を残存条項の対象に含めているものを見た記憶がないのだが、残存する条項における用語の定義は定義条項に基づくことになる場合があり、その場合に定義条項の効力がないと、困るのではないかという気がするからなのだが、果たしてどうなのだろうか。契約の効力が消えたら定義されていたのとは異なる解釈をするというのは、あまり考えにくいし、禁反言とかで防げる気もするのだが…どうなんだろう。

 

…とりあえずこちらの思いついたことをメモしてみた。他の方がもっと整理したものを挙げてくれることを期待する次第。

*1:すでにこちらの記事をご指摘いただいているが、NBLを読める環境ではないので、見ることができていない...(汗)