お願いの仕方を考える(ver.2)

TLを見ていて脊髄反射的にエントリをあげてみる(謎)。

 

企業内法務の方が依頼している弁護士の対応についてのあれこれを見て、思ったことを書いてみる*1*2

 

自社の依頼している外部の弁護士からの折り返しが、長すぎる、要領を得ない、留保事項を置きすぎ、等問題がある時は、依頼をしている側の企業内法務*3の特に管理職としてはどうすべきか。

外部の弁護士の意見などを求めるということは、いうまでもなく、求めた後で、その折り返しに基づき、自社内で何らかの意思決定を行い、その決定に基づく何らかの行動がなされることが想定されるのが通常で、外の弁護士の意見を神棚に飾るだけということはないだろう。そうだとすれば、その一連の過程が円滑に進むよう、法務の側面について管理をするのが企業内法務の役目ということになるだろう。

 

そうであれば、外の弁護士からの折り返しに何らかの不満があるのであれば、まずはその改善を試みるのは、企業内法務の職責の一つと感じる*4

 

では具体的にどうするのか。折り返しの仕方、タイミングなどについては、そもそも依頼時に、求めるものを事細かに明らかにするのが簡便だろう。

外部弁護士の意見を経営層に見せるのであればその旨示して、添付資料の要否なども含めた出力形式などについて詳細に依頼をするのは一つの手だろう*5。検討が詳細または長文になる場合は、別途エグゼクティブ・サマリーとして1ページに要旨をまとめてもらい、その中でも冒頭に結論を書いてもらうなどするという方法も想定できるだろう。

タイミングについては、受け取り後に折り返し内容が使われる「工程」を具体的(日時まで示すことになろう。)に示して、そのうえで、折り返しの期限を示すのが良いだろう。場合によってはドラフトの段階で一度内容を確認させてもらって、事実関係についての誤解等があればそこを質す形を取ることが適切なこともあろう。

 

いずれにしても、社内の事情を「外」の弁護士が知るはずもないし、そこについて、何ら情報を供給することなしに忖度する事を相手に求めるのには無理があるだろう*6。その辺りの調整をすることは、企業内法務の役目であり、醍醐味であることは留意すべきと考える。

 

…というのが目先の対応なのだろうが、さらに、もう少し考えてみる。

 

そもそもなぜ不満が生じるのか。既に指摘も出ているが、自社側の依頼の仕方にも問題がある可能性もあり、そちらへの対処が必要なこともある。そこへの対処なしには、同じような現象が再発する可能性は残るのは言うまでもない。

 

自社からの依頼時に送った情報が、依頼をされる側から見て、不明確なことも想定可能だろう。こちらのインプットが適切でない*7、理解が十分でない、または、事実把握が不十分であるが故の不明確さも想定可能であろう*8。そうした事態が生じていないか、虚心坦懐に振り返る必要は高いのではないか。

また、そもそも信頼関係が十分に構築されていないがゆえに、回避可能な留保がおかれていないかという視点での自省も必要かもしれない*9。信頼関係の構築には相応に時間と手間がかかる。そこを頑張るのは管理職以上の仕事かもしれない。

*1:以下は言うまでもなく、こちらの体感値に基づくもので、異論などがあり得ることは言うまでもない。また、こちらの体感に基づくものであり、現在過去未来のこちらの実務において実践できていることを保証するものではなく、寧ろ自分のことは高い棚の上にあげての物言いということでご理解いただきたい。また、こちらの過去のエントリと内容が重なる可能性もあるが、その点はご容赦いただきたい。

*2:さらに、本エントリの内容についてはDMでやりとりさせていだいただいた数名の方のコメントも参考にさせていただいた。併せて、一部の刺激の強い表現については削除した。該当者の方々には感謝する次第。とはいえ、内容についての全責任はこちらにある。

*3:企業内での機能としてのそれであり、部署名などは問わない。

*4:管理職であれば、改善を試みても、相手方の問題行動が(仮にそういうものがあるとして)改善されなければ、依頼先を変えるよう、必要な社内調整を試みることも含まれるかもしれない。

*5:老眼世代が主たる読み手として想定されるなら、文字のポイント数から指定することは有用だろう。

*6:その辺りについての理解を深めてもらうために、依頼先がそれなりの大きさの事務所であれば、事務所の若手の先生に自社に出向などしてもらうというのは一つの方法かもしれない。なお、いっそのことインハウスにお招きするというアイデアも想定不可能ではないが、特定分野の専門性の維持の観点からだけでも、その選択肢が採れる可能性は少ないと言わざるを得ないだろう。

*7:不利な事情があることが想定されるのに、そこが欠落している場合というのも想定できるだろう。言うまでもなく、不利なことほどきちんと勘案すべきである。

*8:そういう事態を避けるために、そもそも答えの方向性が見えない質問はすべきではない、というような指導を過去の勤務先からされたことがある。折り返しの内容で「サプライズ」が生じるのを避けるという観点では、常にできる対応ではないとしても、その含意しているところも含めて、頭においておいてしかるべき内容という気がしている。

*9:担当者の行動が企業全体の利益になっていないのではないかと外部の弁護士から疑念を抱かれるような場合もここに含まれるかもしれない。