一通り目を通したので感想をメモ。情報収集・分析をするのであれば、目を通しておいて損のない一冊。
twitter*1上等で色々ご教示いただいている白石先生が99問と並んで推されていたことや、著者のtwitterアカウントをフォローしていたこともあり、購入して目を通してみたもの。ロシア軍事を専門とする研究者の著者が、現下のロシア情勢の分析をご自身がどのように行っているかを素材に、情報分析のやり方について解説するもの、というところだろうか。
著者のやり方については、最後のほうに著者自身が次のように簡潔にまとめてくれている。これだけ読んでも理解しづらいが、本書では、確かに煎じ詰めればそう表現できる内容が、実体験に基づき、いくつかの段階に分けて説かれている。
情報を定点観測して、僅かな差分や変化を見出す。あるいは専門家が書いた紙の本を地味にちまちま読んでいく。そして頭の中に相手の施行をエミュレートするような装置を作って、これをアウトプットする。
語り起こしというべき内容に手を入れたもので、200ページ弱とコンパクトにまとまっているし、図表やコラムが適宜挟まれる形で構成されていて、文章も読みやすく、説明もわかりやすいので、特段の予備知識がなくても、通読も容易と思われる。
特に印象に残った点をいくつかメモしてみる。
- 溢れる生情報を分析する方法(「情報処理装置」という表現がなされていた)の重要性は、確かにその通りと感じた。生情報に接することができるだけでは足りないということは肝に銘じておく必要があろう。
- また、分析者にとって必要な情報として、背景情報、生情報、体験的情報の3つを挙げていて、この3者が相互補完的関係にあるという指摘も興味深いと感じた。
- 分析をする自分自身についての状態・状況(精神面、肉体面、それと自分の社会的な立場)が分析行為に及ぼす影響を俯瞰して見ている点も興味深く感じた。その視点がないと、適切な分析を永続的に行うことが難しいのだろう。この辺りはこちらのこれまでの体感とも一致するところでもある。
こちらのような企業内法務においても、情報を分析する必要が生じることがないではない。そういう時に備えて、本書に目を通しておいてもよいのではないか。一度目を通したうえで、必要に応じて本書を紐解き、実際の情報分析に繋げられると良いと感じた。
*1:Xとは言わないことにする。