一通り目を通したので感想をメモ。手元にあっても良いかもしれないと感じた。
記憶している限り(汗)、意図的に避けて通ったつもりはないが、これまでのところ、結果的には、僕自身が相手と契約交渉をする場に直接立ち会った経験は多くない。契約書の審査等をさばくのに追われている部署にいたことの方が多いからかもしれない。そういう次第もあって、交渉術の類にはある種のコンプレックスがある*1。そのため、時折、この手の本を手に取って目を通してみることがある。実際に使う機会にはそれほど恵まれないにしても。今回は丸沼に行った際に目に留まったので買ってみた。
本書は、投資銀行とかエンタメ系の現場で交渉の経験を重ねた著者が、日本の商慣行に合う形で交渉戦略を再構築してみたもの、というところになろうか。交渉を5つの段階にわけて、戦略の立て方を説明し、周辺の事柄についても解説をしている。章ごとにまとめがついていて、一読した後はそこだけ読んで記憶喚起をすることもできると思われる。文章は平易で、分量も多くないので、通読も容易。
説かれていることが、「世界標準」(なかなか大きく出た表現だなとは思うが)*2かどうかは、こちらには判断しかねるが、書かれていることは、段階ごとに、筋道を立てて説明がなされて分かり易い。こちらのこれまでの知識(畳水練というところでしかないのだが)に照らしても、それほど突飛な印象はなく、寧ろ、地道な調査と準備の積み重ねが重要ということを実感した。個人的には、競争力の3分類や、交渉変数を多くすることの重要性、プライスを因数分解する手法には、納得するところがあった。また、オンライン交渉のやり方についての記載があるのは、今時の本ならではだし、画面共有の位置づけについての記載はなるほどと思った*3。
企業内法務においても、契約交渉に出向いた経験値はあっても損はないと思うし、その点について、機会を捕まえ損ねた感があるのは事実なのだが*4、機会が来た時に備えて、本書のような本を備えておいてもよいのかもしれない。