「前衛」写真の精神: なんでもないものの変容

掲題の展覧会を見てきたので感想をメモ。

 

もともと写真家の牛腸茂雄に若干の関心があり、彼についてのドキュメンタリー「SELF AND OTHERS」を上映するということで、それを見に行くために出かけた。松濤は駒場キャンパスの裏手である程度土地勘があるから、大丈夫だろうとろくに地図を見ずに歩いたら、場所を勘違いして、焦ってしまった。

 

第二次大戦前から言われていた「前衛」写真の系譜に、日常を写した所謂コンポラ写真の作家とされる牛腸茂雄の名前がなぜ出てくるのかと思ったが、氏の師である大辻清司の作品が展示されているのを見たり、平凡な日常の中にとんでもない前衛的なものを見る、という視点を説明されて、ある程度は理解できた。シュルレアリスムの中でウジェーヌ・アジェが評価されたことを思うと*1、そういうものかもしれないという気もした。

 

そうはいうものの、こちらは、いかにも「前衛」的なものには、さっぱり興味はなく、見ても正直よくわからなかったが、展示されている中では、牛腸茂雄の写真については、良いと感じた。子供を写したものは、子供としっかり向き合う感じ、対等の立場で、子供の世界の中で、彼らと接しているような感じがして(大人になるとなかなかできない気がする。)、良い写真だなと感じた。

 

映画「SELF AND OTHERS」については、牛腸茂雄氏が残したもの、それは写真であったり、手紙であったり、実家の部屋だったり、フィルムだったり*2を再構成して、氏の足跡というか気配を淡々とたどるような感じのドキュメンタリーだった。氏の肉声を録音されているものもあり、声を聴くと少しだけ身近な人に思われてきた。

 

*1:実際その辺りの展示もあった

*2:別途単体で館内で流されていたが。