結局は何をしているのか:契約審査とは

突発的に思い立って、呟いたことを基にメモ。体感に基づく物言いで、裏取りとかはしていないから、異論はあり得るし、こちらの実務での行状は高い棚の上にあることをあらかじめ付言する。また、過去にネタにした内容との重複があるかもしれないがその点も気にしていない。

 

企業内の法務部門*1の契約審査とは、はたから見た時には、何をしているのか。おそらく大別すると2つの機能なのではないかと考える。

1つ目は適法性というかコンプライアンス的に疑義のある行為をしないようにするということ、2つ目はリスク管理というか、自社の得る便益の最適化を確保すること。

 

前者については社会的に要請される規範(強行法規に限らない)に抵触しないかという観点からの審査になり、抵触する場合は、その回避が求められ、回避不能な場合は、当該行為自体の停止または修正が求めていくことが企業内法務として必要になろう。ここで抵触を気にすべき規範は、強行法規は含まれるが、状況次第でその他の規範または規範性があるのか疑わしいものも含まれる。英語のcomplianceの原義が外からの要請への対応というニュアンスのようなので(うろ覚えだが)、そう考えると比較的理解しやすいところではなかろうか。強行規範でないものの一つの例が、CGコードとか人権系のガイドラインとかであろう。強行法規でないが、取引の網の目(サプライチェーンに限られない。)の中で、結局履践または反しないことが求められる結果になることがあるように見受けられる。

 

後者については、前者に該当しない限りで、リスクの極小化と得るものの極大化を図ることが求められ、その範囲での対応が求められるし、その範囲では事業部門の意思に沿うことが求められることになろう。その範囲であれば事業リスクになり、そこは事業リスクを負担する事業部門に沿う対応が求められるものと考える。また、後者については、前にネタにしたが、契約書での手当は、一つの手段でしかないことにも留意が必要だろう。取引上の力関係で押し切れるならそれでよしという対応もあり得るだろう。もちろん、保険での手当も一つの手であろう。

 

そして、企業内法務としては、後者の対応に精励することで、前者の対応が必要な際に事業部サイドの理解が得られる可能性が増すことになるという関係にあるような気がする。これを「貸し借り」で考えるのはあり得る反応だろう。そうした意味で可能な限りで後者の枠内で対応できるように知恵を絞ることが重要であろう。

また、その際には、自社の対応の適切性が争われたときにも経営判断の原則で保護されるよう、社内の意思決定過程を記録化することが重要と思われる。記録化というのも、記録すべき内容を適切に記録するだけでなく、記録すべき内容が適法なものとなっていることが重要であることはいうまでもない。

前者と後者の区別のポイントは、反したときの制裁を上回る便益があることが想定できるか否かというところかもしれない。ローエコ的な見方かもしれないが。

 

この両者に当たるに際して重要なのは、前者については、照らし合わせる対象たる規範の理解と、ビジネスの理解であり、後者についてもビジネスの理解であろう。いずれにおいてもビジネスの理解は必須かつ重要だろう。理解については程度問題であるとしても。ビジネスの理解については、それがなければいかなるリスクが現在するのか、規制が及ぶのかの判断が適切にしづらいからということになろう。ビジネスの理解では、扱っている商品役務の理解、関与する当事者の役割分担、力関係、の理解、そうしたものを理解したうえでの、自社の強み弱みの理解というあたりが必須になるのではなかろうか。仮に同じ役割分担をするとしても自社の状況が異なれば、リスクのありようやリスクの許容度合が異なることがあり得て、法務側の契約案に対応についても異なる可能性があることになる。その辺を踏まえないと、身の程を弁えない、折り返しをしてしまうことになりかねず、事業部門の不満につながりかねない。もちろん、身の程は強行法規などに反することを正当化するとは限らないのだが。

*1:機能としてのそれであり部署の立ち位置または名称は問わない