新アプリ法務ハンドブック / 増田雅史 (著), 杉浦健二 (著), 橋詰卓司 (著)

一通り目を通したのでメモ。こちらはこの分野について門外漢だが、素人目には、現時点では、この分野について用事があれば手元にあって損のない一冊といえるのではないかと感じた。

 

このご時勢、B2Bの製造業であっても、いつ何時スマホのアプリとの連携とか言い出すかわからないと感じたこともあり、購入してみた。前身の書籍について、当時直接接点があるとも思われずに買わないでいたら、いつの間にか絶版になっていたということも脳裏をよぎった。マンサバ氏が関わっている点とコンセプトの共通性はあるとしても、他の著者が入れ替わり、出版社も変わったところで、敢えて「新」と題して連続性を強調する必要があったのかは、前身の書籍を読んでいないこともあり、正直よくわからなかった。

 

本書では、アプリに関する種々の法務マターを、開発段階、提供段階、運用段階に時系列に従って分けて、コンパクトに整理・解説している。かなり広範に色々と気にしないといけないことがあることを実感する。普段この辺りに用事があるわけではないので、大半の話は知らない話だった。

 

コンパクトさを追求したことや、主な読者層として、非法務の方々を想定していることもあってか、条文番号の適示や文献の出典の表示は控えめにも見えた*1。そういうのがうるさく見えるであろうことからすれば、一つの判断なのかもしれない。ただ、老眼世代としては、一部の文字はもう少し大きくしてほしかった。また、できるだけ広範な話題を取り上げたことの裏返しとして*2、個々の分野の解説については、実務では、物足りないところも出そうで、そういう意味では、個別分野のより詳しい解説書への読書案内などがあってもよかったのではないだろうか。もっとも、この辺りは、動きの速い分野なので、そういうものは、法改正情報などと併せてwebでサポートというのが一つのありようなのかもしれない*3*4

 

ともあれ、類書のない独特な本であって、必要になった時に紐解けるよう、あらかじめ一通り目を通したうえで、座右に置いておくと、いざこの分野の話に関わることになった時にも慌てずに済むだろう。そういう意味で、手元にあって損のない一冊ではないかと感じた。

*1:反面で索引は相応にしっかり作られていると感じた。

*2:なるべくもれなく拾おうとしていることそれ自体にも十分に意味があると思う。

*3:そういうのを本代以外の追加料金を取ることなく求めるのは、虫が良すぎるのかもしれないけど、もし、著者たちが、本書の読者が知っておくべき情報を整理して示してくれれば、それはそれで有用であることは間違いないだろう。

*4:書き忘れたことがあったので追記:「本稿執筆時点」では云々というような記載がある一方でそれがいつなのか不明という箇所があった。この手の動きの速い分野の本では基準時を特定しておくことが重要と考える。できれば共著であっても一冊を通じて統一して定めてもらう方が読者にとっては望ましいと感じた。