一通り目を通したので感想をメモ。法律系の方々にも参考になるところのある一冊と感じた。
政治学での分析を説明材料として、因果関係を推論するための方法、説明の方法について説いた本、というところになろうか。#クセ強本スナック、でご紹介いただき、興味があったので、購入してみた。もともと学部では政治系を中心に学んでいたこともあり*1、政治学の分野を中心にした分析方法論というと、比較的とっつきやすいような気がした*2ということもある。分析方法論がテーマなので、計量系で出てくるような頭の痛くなる数式はそれほど多くなく、数式を無視しても内容の理解に大きな問題は感じない程度であり、そういったあたりに門外漢であっても安心して読めるのではなかろうか。一応政治学の方法論について書かれているようであるものの*3、「反証可能性」を鍵としつつ説かれている内容は、政治学に限らず、社会科学一般に応用可能な部分が多そうに、素人目には見えた。分量も全体で300頁弱とそれほど分厚くなく、文章も軽快なので、読むのもそれほど苦にならないように感じた。
本書で説かれている知見について、法学というか、企業法務の分野でどのように活かし得るか。すぐに思いついたことをいくつかメモしてみる。思い付き程度なので、事実誤認などがあるかもしれず、こちらの思い込みに過ぎない可能性がある点は、ご容赦あれ。
- 因果関係を推論する際に、謝った推論になるのを避けるためにどのように事実を分析すべきかという分析範囲の設定の仕方や分析方法それ自体が、物事の生じた因果経過を推測する際に有用なのではないかと感じる。因果関係を含む一連の事実を認定することは、第三者との紛争においてだけではなく、内部の不正調査等においても必要になると思われる。
- 「政策提言が、期待された効果を生まなかったとき、その提言のどこが誤っていたかを知ることは、それが前提とした因果関係のどこにまちがいがあったかを検証することなしには不可能である。それをしなければ、提言と反省を無限に繰り返すことになるだろう。」と指摘は、不祥事への対応としての内部調査や社内での規程改定などを変更する際にも、重要な視点となるのではないか。
仮にこうした点が、妥当だとすれば、企業内法務の担当者にとっても、これらの点をよりよく理解するために本書を手にしてもそれほど損はないのではないかと感じた。