法と社会―新しい法学入門 (中公新書 (125)) / 碧海 純一 (著)

こちらも長らく積読山にあったものだが、先日の法哲学入門に目を通した、「ついで」に、というと語弊があるが、気分的にはそういう感じで、目を通したので、簡単に感想をメモ。

新しい法学入門、と言っても、オリジナルは50年以上も前なので、副題は今となっては不当表示とはいえないとしても不正確な表示という感もある。今の(もっとも50年前のそれというべきか)法の姿を、周辺学問との関係、及び、法学史との関係から描き出そうとした本というところだろうか。

 

もともと高校~大学一般教養の年代を想定して書いた旨の記載が「まえがき」にあり、確かに、法学部/法科大学院の個々の専門科目としての法学を学ぶ前にこういう形で現代の法学の外延部分に対する視野を養っておくことは、良いことなのかもしれないと感じる。何よりも、個別の科目を学び始めると、こういう学際的なものを学ぶのはしづらくなるような気がする。資格試験とも、その後の実務とも直接関係しないものを学ぶ余裕があることは多くないかもしれないと思うので。

 

個人的には、最初の数章は正直読んでいてあまり興味は持てず、徐々に本丸?に近づくにつれ面白くなってきた感じがした。4章・5章は流石に内容が古い気もしたが、法学史分野にきちんと触れたことがなかったので面白かった。概念法学、というのがどういう意味なのか、分かってなかったが、そういうことか、とある程度理解できた気がした。

 

周辺分野の知見を踏まえて書かれている本であって、専門分化の進んだ昨今では、一人の書き手がこの種の本を書くことは極めて難しくなったのではないかという気がする。50年余の学問・実世界の進展を受けて、この本にとって代わる本が出てほしいとは思うのだが。そういうことは、三谷太一郎先生が「日本の近代とは何であったか」のあとがきで述べられているように、異なる学問との間を架橋できるように、general theoryを目指す「老年期の学問」として、シニアな先生方こそに担っていただきたいものと感じるのだが…。