法学教室2021年5月号

いつものとおり、目を通した範囲について、呟いた感想を基に箇条書きでメモ。

  • 巻頭言は、出てくる判例のほとんどを知らないので意味合いが取りづらい。
  • 法学のアントレは、最終段落でオジサンが若者に近づこうとして若者受けを狙ったのがダダ滑りしているという印象を禁じ得なかった(汗)。同じ(?)オジサンとしてはもって他山の石とすべし。
  • 外国法の記事はイギリスで契約法。イギリス契約法のドライさは現下の状況では目にする機会が多いかもしれない。BOOKGUIDEで挙げられているうち1冊が積読山にあるので目を通したいところ。
  • 法学教室プレイバックは民訴・倒産法。このシリーズ、有名な先生方の記事・連載が取り上げられることが多いような気がするけど、気のせいだろうか。
  • 特集は憲法の学び始めと条文。
    小島先生の文章は全体の鳥瞰と趣旨説明というところ。
    淺野先生の文章では、明白且つ現在の危険についての説明が興味深かった。ネタ元?がBrandeisとは不勉強で知らなかった(汗)。
    金井先生の文章では、「わいせつ表現規制」の未解明の部分の説明が興味深かった。
    門田先生の文章では、選挙運動規制についての「選挙のルール論」が興味深かった。批判も興味深いが、昨今の感染症禍の下では、個別訪問禁止については、感染リスクとの関係で。「選挙のルール」の一部として正当化されるのだろうと感じる。
    玉蟲先生の文章は、表現の場に関する議論は興味深かった。ついパブリックフォーラム論に目が行ってしまうのだが、それ以外にも検討すべきところがあることを確認できたのは有用だった(こちらが不勉強なだけかもしれないが)。
    上村先生の文章は、インターネット上の名誉棄損的表現への対応の現状の解説が興味深かった。
    この特集は、小島先生が冒頭で述べているように、憲法の授業において、ここまで丁寧に説明していると授業としてのバランスを欠くと思われる程度まで、個別法の議論を解説していて(それゆえに大学などでの授業では同様のことはしづらいのではないかと)、受験生にとっては有用なのではないかと感じた。
  • 判例クローズアップ。
    参院選投票価値暴動選挙(?)の記事は、最高裁判決を国会への「忖度」と断じているのは、個人的には、あり得る見方だろうと感じた。ジュリストの時の判例よりは判旨の引用が多かった点、及び、グラフで格差の推移が示されていてわかりやすかった点が、印象に残った。
    出席停止処分の件は、宇賀裁判官の補足意見の引用部分が明快で良いと感じた。判旨自体は、議員の背後にいる有権者の意見を重視したのかなという気がしてきた。
  • 講座。
    憲法は、投票価値の平等関連の数々の訴訟の鳥瞰としてわかりやすかった。投票価値の不平等の現実政治上の悪影響についての指摘は知らなかった。投票価値に較差があるところで選出されると、国民代表の正当性にも影響するという点もなるほどと思った。
    行政法。組織法はどうしても興味が持てない。だからどうしたと思ってしまう。
    家族法を考える。戦後改正の総括が圧巻。裁判所の人員の問題もあって、裁判所の関与の仕方が不十分になっているという指摘は納得。
    会社法。議案数の制限の規定での議案数の数え方は、実務でこの規定の適用を考えるときには結構悩みそうな予感がした。また、任期満了で退任する取締役の解任を求める決議の意義についての指摘は、見落としていたところもあって、なるほどと思った。
    民訴。相変わらずの押し付けがましさはさておき、既判力の客観的範囲についての解説は個人的には興味深い。訴訟物は当事者が裁判所の判断を求める範囲であって、裁判所が訴訟物の判断をするために検討する範囲とは別というのは納得。
    刑法。故意の扱い方の議論は、面倒くさいと思いつつ読んだものの、説明には、なるほど、と思う。この文体にはなじめないものをなんとなく感じるけどまだ2回目なのでそのうち慣れるだろうと思うことにする。
    刑訴。違法収集証拠排除法則。最後の一言が一番重要ではないかと感じる次第。
  • 演習。
    憲法。情報プライバシー権の議論は興味深いし、今後重要度が増すのだろうと思う。
    行政法。H19最判の読み方が興味深い。
    民法。478条で真の債権者の帰責事由が不要とされる理由については、個人的にはピンとこない気がした。帰責事由を要件とする、または、債務者の善意無過失の判断時に真の債権者の帰責性を考慮するほうが良い気がする。
    商法。問題文は、連載を通じて一つの物語になるのだろうか。問1については、事情を知らないと質問自体思いつかない可能性もあるのではないかと感じた。問2については松中先生の「思いつき」が興味深い。
    民訴。団体に関する訴訟の当事者適格は難しいと改めて思う。
    刑法。不能犯まわりはどうしても苦手意識が...。
    刑訴。被疑者に対する職務質問と供述拒否権の告知の解説は職務質問なのか任意捜査なのかの線引きの考え方が印象的。
  • 判例セレクト。
    行政法。誤った行政庁に対する審査請求の扱い方について、中原教授の指摘する疑問点に賛成。
    民法債務不履行の際に弁護士報酬が認められる範囲については、今後の裁判例に期待するしかないけど、同じ事案でも不法行為構成か債務不履行構成かで請求できる・できないが変わるのは何だか変な気はする。
    商法。クオカードの件は、確かにクオカードの贈与が総会の議事にもたらす影響の疎明は難しいんだろうなと感じる。
    商法のもう一つの社債への利息制限法1条の適用の可否については、1条の趣旨からすればそうなるのか、と納得。
    民訴。債権者側と債務者等のいずれの利益保護を優先するかで判断が分かれた事例ということなのだろうか。
    刑法。虚偽の申告でも自首が成立する場合といない場合があるということのようなので、成立・不成立の境界線が気になるところ。ここは判例の蓄積を待つしかないのだろう。
    刑訴。釈明義務違反で原判決を破棄した事例。釈明義務を肯定しても義務違反を認めない事例との差異についてのコメントには個人的には納得。

…何だかマンネリ化してきたこともあって、感想が淡白になっているような気がする。別に感想を言うのが主目的ではないから問題はないのだが、もう少し何か言えないかなと自分でも思う。