法学教室2020年7月号

 

 

 

遅まきながら(謎)、呟いたことを基に感想を箇条書きでメモ。

  • 巻頭言。数量に関する契約不適合について、条文の文言を見て、個人的に疑問に思っていたところについての分析がなるほど、と思う。
  • 法学のアントレ。教える側・教科書を書く側はこういうだろうなというところ。受け手側の意向はさておき。
  • 判例セレクト。刑訴と刑法、民訴の1つと行政法がそれぞれ同じ判例についての解説というのが興味深い。まあ、それに適した事件だからなのだけど。民訴も、実質的に1つの事件についての2つの判断が2つの記事で紹介されている。刑事事件関係書類該当性を類型的に判断するというのは、まあそうなのかなと思ったし、そのうえでこの事案でどうするかという点も、記事の記載を見る限りではなんとなく妥当な決着になっているような印象。商法。会社法339条2項の「正当な理由」の意義についての議論(解説3)が興味深い。確か司法試験の問題(H28だったはず)でも悩んだ覚えがあるなあ*1民法は、途中までどの事件の話か分からなかった点を反省(そこじゃない)。行政法は、民訴の事件と同じ事件だったのに今更気づいた。情報公開からの議論は確かに行政法の範疇だよな、と。憲法は手続的問題点の指摘が興味深いけど、問題となっている事件の当事者には、問題点のツケを負わされている結果になっている点が何とも…。
  • 演習刑訴。「逮捕の必要」のところの議論が、設問の事案の某事実がその材料になっているということが見抜けずにちょっと悔しい。刑法。クロロホルム事件をベースに実行の着手の話なんだけど、着手時期の判断に際して、行為者の犯行計画を考慮に入れていい理由ってなんだっけ?と迷う。民訴。二重起訴禁止のあたりは結構知識が抜けていて焦る、が、まあ、使ってない知識は抜けるよな、と納得。商法。経営判断原則の判断基準の議論は興味深いけど。判断基準が異なるせいで結論が変わるような事例がどこまであるのだろうと疑問。民法。丁寧な解説なんだけど、他の学者の名前の後ろにいちいち「先生」を付ける必要があるのかというところが気になった。行政法。事実行為の話は何だかもやっとする。憲法は、アメリカの議論が紹介されていてそれは興味深い。
  • 刑訴の講座。丁寧なかいせつではあるが、とりあえず長い。ここまで長々と説明すべき内容なのかは疑問が残った。刑法は、事後強盗罪に関して、答案戦略的視点も踏まえて、解説があるのが良い。民訴の重複訴訟禁止と相殺の抗弁のところは、最後に書かれていた手は、なるほど、と思ってしまった。この手を自分で思いつけるようにならないといけない。会社法はこの辺りは流石に知識としては抜けてはいないなと。最後の立法論に関する部分は興味深い(直ちに賛成してよいのかは判断がつかないけど)。民法の連帯債務のあたりは、相対効・絶対効の区別に始まり、もともと苦手なところ、変更があったので混乱する。もっと慣れないといけないのだろう(汗)。行政法の講座。取消訴訟の訴訟要件で処分性・原告適格以外。訴えの利益のところは、なるほどというところ。受験生時代今一つわかってなかった気がした。憲法の講座。こちらの能力故に消化不良感あり。だから何だという印象が残った。
  • スポーツ選手とパブリシティー権の記事は、個人的には、パブリシティと独禁法との関係に興味を覚えた。
  • 労基法37条の判例紹介は、正直よくわからなかった。賃金計算のあたりはややこしい印象。具体的なケースで数字を使って説明してもらった方がこの種の問題では理解しやすいのではなかろうか。
  • 東京地裁の民事事件の記録保管の記事は、一時期記録破棄が問題になったことを受けて変更された運用についてのもの。一定の改善が図られたようにも見えるから、良いのだろう。
  • 民法の特集も後ろから読む。純粋経済損失と不法行為法のところは、建物について「建物の安全性に対する信頼」を保護法益となるのか、と疑問に思ったが、最近の豪雨災害での報道で、頑丈な建物に避難を呼びかけるのとかは前記の信頼の表れかと考えて納得。諸般の要因のつじつまの合わせ方としてはそうなるんだろうなとは思ったけど。委任と代理の記事は、内部関係と外部関係の関係が良くわからんなと受験時代に思ったけどそのままスルーしていたことを思い出した。議論が色々あるということは分かった(汗)。保証人に対する情報提供義務の記事は、3つの情報提供義務の違いの整理がわかりやすかった。債権譲渡特約の記事は、改正の趣旨に整合的な整理という意味では分かりやすかった。不当利得の一般規定と類型論の記事は、類型論の整理はわかりやすかったのだけど、類型論がなぜ許容されるのかがこの記載からはよくわからないように感じた。相続による権利承継の対抗要件の記事は、相続法における899条の2と財産法の177条などの規定との関係の整理の仕方が何だか思った以上にややこしくて、悩む。

*1:H28司法試験の事案だと、株主の目から見ると、経営者のパフォーマンスが悪いので、株主総会で手続き的に瑕疵のない方法で多数決を得て経営者のクビを切ったのに、報酬支払義務が生じるのは、経営者の身分保障と会社の所有者たる経営者選択権との調整として、経営者寄りすぎないか疑問だった