ファッションデザインと意匠法の「距離」/中川隆太郎

「ファッションロー」を読み終わった後に、発刊の報に接して、収録されている日本工業所有権法学会年報を衝動買いしたものの*1積読だったので、今更だけど、感想をメモ。

ファッション業界で意匠制度の利用が低調な理由について、手続き面での相性の悪さ、及び、実体面での相性の悪さ、特に模様やテキスタイルデザインの意匠権による保護の難しさについて検討がなされている。後者の点については、初めて目にする内容だったが、いずれの点についても、データや判例・裁判例に基づく議論がわかりやすく、門外漢にも興味深く読める形でまとめられていると感じた。

 

この分野にそれほど詳しいわけではないが、季節性とか、流行の不確実性を考えると、意匠とか商標のように審査に時間と費用のかかる制度とファッション業界との相性がよくないのは、ある意味で仕方がないのだろうと思ったりする。これらの制度は与える保護内容からすれば、審査にある程度時間がかかるのは避けがたいように思うから。もちろん審査の迅速化について、可能な方策があるのなら、取ることは検討すべきだが。

 

審査系の制度での保護が困難となると、無審査での制度、具体的には、著作権法と不競法での保護を考えることになるけれど、そちらで十分な保護がされているかというと、必ずしもそうではない。むしろこちらの方が問題なのではないかという気もする。この点については、著作権法について、海外での判例・裁判例を踏まえて、著者が唱えるような形での対応が望ましいのではないかという気がした。不競法での保護はハードルが高くて難しいというのは指摘の通りだと思うので。

 

 

*1:年報は他の記事も興味深いのだけど、いつになるかわからないのでこの論文についてだけ、とりあえず感想をメモしてみる。