弁護士はこう表現する 裁判官はここを見る 起案添削教室 / 柴﨑 哲夫 (著), 牧田 謙太郎 (著)

目を通したので感想をメモ。起案をする上で座右にあると有益と感じる一冊(特に僕のように起案に苦手意識のある人間にとっては)。

 

本書の構成は、まず、第1篇の基礎知識編で、法律家として文章を書くときの基礎知識と思われることを解説している。第2編の実践編では、第1章では訴訟外の文書(内容証明など)を、第2章では訴訟での文書を、それぞれ題材にして、設例に即した文書と、その文書の問題点となぜそれが問題となるのかの解説、それに対する改善案、コメントに対する裁判官のコメント、という順序で検討がなされている。

 

改善前の文書は、放っておくと書いてしまいがちにも見える。これに対して、問題の所在の指摘と改善策の提示があり、改善後の文書まで示されている。参考になるところが多いと感じた。改善前・改善後双方の文書があると、問題点の指摘と改善方法の提示が何を言っているのか、理解し易いと感じた。

 

解説の内容についても、文章以前に、事実確認などを十分にすること、書き出す前に、何を書くのか、構成を考えておくこと、というあたりも、確かにその通りだよなと、納得しかない。読み手を意識するという点も、まさに、おっしゃる通り、としか言いようがない。ただ、個人的には、基礎知識にある、文章作成時の「8つの約束事」が、一番印象的だった。訴訟での文書においても、自分がわすれがちなところもあるので、注意しないと、と感じる次第*1

  • 一文を短くしよう
  • 主語と述語は1セットずつ
  • 主語と述語を離さない
  • 接続助詞の「が」は使わない
  • みんな忙しい→結論から理由へ
  • 接続詞に頼りすぎない
  • あえて接続詞を抜いてみる
  • 相手にとって必要な情報を選別する

(追記)本書については、BLJで某二次妻・無双様がレビューの対象としている。企業法務の担当者視点からのレビューとしては、確かにご指摘のとおりと感じた。ただ、その場合は、弁護士と裁判官の対話、というよりも、インハウスと外の弁護士の対話という形の方が良いのかもしれないと感じた。

*1:とはいえ、このエントリにおいて、これらが貫徹できているかどうかについては心もとなく感じるのだが…