ちょっとそれは…

流石にちょっとどうかと思う記事があったので、記録の意味で若干のメモ。

問題となったのは次の発言

「独立した事務所を持てず企業の法務部に在籍して日々の糧を得ている弁護士は少なくなく、こうした弁護士のスキルアップや新たな収益源の場としても活用してもらえれば」

後から、追記がなされていて一定のフォローが試みられているが、やはりどうかと思った。上記の発言がなされたことそれ自体は否定されていなかったので。

 

いくらなんでも企業内の弁護士の方々に失礼だろうというのが第一印象。そもそもモバイルとかで事務所なしでも相応に仕事が可能な状況下で、事務所を構える必要がどの程度あるのか、それ自体に疑義もあるところだし、独立した事務所を持てないということとインハウスになることとの間には必ずしも直接の関係があるとは限らない。独立した事務所を構えることができても、あえてインハウスを選ぶということも十分に考えられる。

 

この種の言説が広まると、インハウスの方々が、独立して事務所を構えている方々に比べて劣っているかのような印象を与えることにもなりかねないし*1、そういう印象を前提に、ODRの担い手自身についても同様の印象を与えかねないようにも思う。そういう印象への懸念から、担い手になるべき人が、担い手になろうとするのを敬遠することにもなりかねない*2。そういうものが、ODRなるものを広めようとする動きに有利に作用するとは考え難い。

 

この種の言説を大学教授にして弁護士登録している人間がしたというのであれば、それ自体、その者の見識を疑わせるに足りるものだろうし、その程度の見識でこの分野にこれ以上関わるのは避けた方がよいのではないか。もちろん、件の記事はライターの方が書いたようだし、そのライターの方の能力の問題かもしれないが、このエリアの記事を書く際にその程度の配慮もできないのに書くのが妥当なのか、書かせた側の能力共々疑わしいと感じないわけにはいかない。

 

 

*1:そういう意味ではインハウスの団体などがきちんとした形で抗議をすべきと考える

*2:既に指摘が出ているように、そもそもインハウスが副業で手を染めるのはむずかしいのではなかろうか。業務量の問題とか利益相反が生じる可能性とかを考えると。公益活動すらやらなくていいという有資格者法務部長のいる企業だってあるわけだし…