複数のありそうな架空の事例に対し,若手弁護士のアドバイスを途中でベテランが修正する,という形の事例解説に加えて,それぞれの事例について精神科医の方がコメントをする形で書かれている本。面白そうだなと思ったのと,離婚事件も,いつ振られてもおかしくないのとで買って読んでみたもの*1。
若手弁護士のアドバイスが,不適切で,強制的に軌道修正をするためのギミック?が,あまりにご都合主義的なのを別にすれば,読みやすく,コンパクトなので,離婚事件について最初に読む本としてはとっつきやすいのではないかと感じた。
また,内容面についても,弁護士の著者の主観の出ている部分,特に,受任すべきかどうかの判断基準についての意見(設例もいかにもありそうなもので興味深かったが)や,相場観からすれば,勝ち目の薄い事案の依頼者への対応の仕方についての考え方の部分は,1年目の身からすれば,なるほど,と思うところだった。
それとは別に精神科医の著者の方のコメントも,他分野の専門家の目にはこういうふうに見えるのか,というのが新鮮*2だった。特に印象的だったところを,いくつか順不同でメモしておく。
- 心のメンテナンスに対する医者と弁護士の態度の差異。これはその点についての専門知識の差異に由来するのだろうけど。
- 依頼を断る可能性を想定した,院内の張り紙についてのコメント。弁護士事務所でも時には考えたほうがいいのかもしれない。
- 相談を録音する相談者についての評価と,録画を勧める理由。
- 安易な同意ができないときのオウム返し法の効用(これは法曹でも自覚的にやっている人が多いだろうけど,僕自身は苦手なので,印象に残った)。