取締役会報告事項の実務〔第2版〕 / 中村 直人 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。この分野に用事があるなら、目を通しておくべき一冊と感じた。

 

この分野の第一人者と言っても、今なおおそらく過言ではない中村直人先生が、取締役会での報告事項や取締役会規程について論じた一冊というところだろうか。200頁弱とコンパクトで、文章も読みやすいのだが、読みながら、気づかされることが多く、そのせいもあって、内容が「濃く」感じられ、一通り通読するにも、思ったよりも時間がかかってしまった。報告事項について、知りたいことがあって手に取ったのだが、これまで目を通していなかった不明を恥じるばかり。

 

本書は5章からなる。

第1章では、報告義務の根拠は何かという問いが出され、363条以前に取締役の善管注意義務から報告義務が導かれるという指摘がなされる。ここからして、なるほどと感心しながら読むことになった。会社法下での報告義務の全体像や機関相互の関係のまとめも秀逸。

第2章では、何を報告すべきかについて、複数の視点からの分析がなされる。法体系上の整合性の検討もなされており、そつがない。取締役会の最も本質的な機能は監督機能であり、そこからすれば、決議事項よりも報告事項の方が本質的で重要との指摘にも、逆に考えていたこともあって*1、唸らされる。

第3章では、報告事項は規程に定めるべきかについて論じられている。著者の取締役会規程の試案と逐条での解説が付されている。最後に付されている注意点も有益。

第4章では、報告の仕方はどうすればよいかについて、論じられる。報告義務者、実際の報告者、報告頻度、報告の仕方(書面でするか、口頭でするか)、審議、を論じたうえで具体例のイメージが示されたうえで、議事録への記載と、義務違反への制裁について解説がなされる。個人的には、報告頻度について、経営情報のシステム上のデータへのアクセス権の付与を前提に、モニタリング・モデルにおいては、3か月の一度の報告を形式的に課す必要はないのではないかという指摘が、示唆に富んでいると感じた。

第5章では、報告と役員の責任との関係について、10の裁判例について、関連する部分の分析を基に、参考にすべき点が教訓としてまとめられている。

 

全体を通じて、制度の趣旨を、歴史を振り返りつつ、文言に拘って解釈していき、地に足の着いた結論にたどり着いているのは、流石としか言いようがない。

 

本書(第2版)が出たのは、監査等委員会設置会社の制度ができたあとの2016年で、10年近く前なので、直近の状況を踏まえた改訂版が出ることを期待したい。モニタリングボードが進展して、業務執行取締役の数が減った場合の影響が、どのように出るのか、著者の考えを伺いたいと感じる。

 

追記)up時期の設定を間違えたので、修正した。

*1:単にこちらが不勉強なだけなのだろうが...。