新・株主総会ガイドライン〔第3版〕 / 東京弁護士会会社法部 (編集)

一通り目を通したので感想をメモ。総会運営に関与するなら一読の上、座右においておくと有用な一冊と感じた。

 

本書は、「第3版はしがき」によれば「東京弁護士会会社法部が、株主の質問権、取締役・監査役の説明義務の範囲はどこまでなのかなど、株主総会当日の議事運営に関する法的基準を提言するもの」とのこと。令和元年会社法改正や関西スーパー事件等の最近の判例・裁判例の進展を踏まえた改訂版。総会周りの実務を外部からアドバイスしている弁護士の先生方から見た、ある種の(唯一とは限らない)グッドプラクティス(適切な表現が思いつかないのでカタカナを使うが)の提言ということになるのだろうか。

 

こちらも、ここまでの3社目以後の勤務先企業では、総会運営に一定程度関与してきたが(ただし4社目は外資で書面開催だった)、関与の度合いは、招集通知の議案部分の確認、想定問答の確認、議事録のチェック、当日の質疑や動議への対応要員(議長の後ろに座って対応)等に限られ、それ以外のところ、例えば総会のロジ回りや受付での対応等は、法務の要素があっても、業務分掌上担当となっている他の担当部門がやっているのを見ているだけだった*1

 

そういう立ち位置からすれば、本書で自分が担当したことのない部分も含めて、網羅的に総会に関する法務事項についての解説を読むことができるのはありがたい。QA形式で、結論のみをまずAで示して、その後で解説があり、そこでは論拠も記載があり*2、簡潔にまとめているうえ、最悪急ぎのときは、Aだけ見て対応も可能という意味で、使いやすい形になっていると思う。章立ても時間軸に沿う形になっており、目次からの検索性も高いと思われる点も良いと考える。書かれている解説の内容も、個人的な経験の範囲から判断すれば、比較的穏当と感じる。個人的には動議の扱いについての整理が明快で特に印象に残った。説明義務のところはやや抽象的な記載になっているような気がしたが、具体的な事案なしに解説を書くのには限界があるということなのだろう。

 

本書は、おそらく、主に外部から企業の総会対応を支援する弁護士向けの本ということになると思うが、企業内にいる法務担当者にとっても、外の弁護士さんから見るとこういう見え方になるということを理解しておくことは、自社の総会運営を支援してもらう弁護士さんとの円滑な意思疎通に資することは間違いなく、円滑な総会運営のために一読の上座右に置いておくと有用と感じた。

*1:ついでに言うと3社目以後は管理職なので担当者レベルで対応するものについては、自分でしたことがないものが多い。

*2:といいつつ、論拠がどこにあるのか明示のない議論の紹介とかもあるので、そのあたりはもう少し補充が欲しかった。たとえば、採決を行わない総会シナリオの主張についてとか。個人的に某先生が口にされているのに接したことがあるが。