著者よりご恵投いただき、一通り目を通したので感想をメモ。法学部に入学する際には購入して、一読すべき一冊と考える*1。
なお、ご恵投いただいたという経緯から以下のエントリの内容が中立的でない可能性があることをあらかじめ付言しておく。
多作であることは既に多言を要さない松尾先生だが、実務家であると同時に教壇で学生を指導する立場でもあり、その立場でも多作である。本書は、そういう立場で書かれた法学入門といえ、著者のその種の講義の内容が基になっている。
本書は序章から8章までの構成。
序章で法学を学ぶ意義、法学部での勉強の仕方の解説がなされる。実生活における法学を学ぶことの利点等が実例を示して具体的に解説がなされている*2。この辺りは実務家らしさを感じるところであると同時に、こういうあたりをきちんと説明しなければならないのが、今時なのかもしれないと感じた。
第1章で法学のポイント。法とは何か*3、法解釈をする上での課題、判例入門、法学とキャリアの関係が説かれる。判例入門での解説は、文章は平易で読みやすいものの、内容の難易度が高い気がした。本書を講義などで用いるのであれば、そこは教える側のフォローで乗り切れるのではなかろうか。法学とキャリアの話まで説明があるのは、著者の立ち位置によるものかもしれない。企業内で法務*4以外の部署に配属された場合の法学の活かし方が書かれているのはさすがというところか。
第2章以下で各論として、司法試験の必修科目の7法についての入門的な解説がなされる。研究者ではない実務家である著者だからこそ、全科目に対して同様の距離を保った解説ができているのではないかと思う。第3章が民法、第4章が刑法、第5章が憲法とここまでで上3法のイントロとなる。その後両訴訟法と会社法、行政法という順序になる。各章とも習得したい事項のあとに、ハイライトとなる論点の指摘、事例問題の検討手順、実務との繋がり、という順序で説かれている。ハイライトととなる論点についての説明は、説の対立のある所には立ち入らず(その分中立的という見方もあろう。)、論点の存在のみを示すものもあるが、各章が最大で30ページ程度なので、やむを得ないのだろう。事例問題の検討手順については、上3法については、簡単な問題と解答例まで示されているのが親切と感じた。入門講義的な書籍としては、講義で使うことを前提に、こういう立ち位置でその分コンパクトにまとめるというのも一つの発想だろうと感じる。
いずれにしても、学習者は迷子にならないように、それでいて、しっかり自分で学習を進められるように、という配慮がなされた本なので、法学を学ぼうとする法学部生(当時のこちらのように政治メインの学生は対象外かもしれない)にとっては、最初に通読しておくべき一冊ではないかと感じた。
