下請法改正と『法律文章読本』/ 白石忠志

一通り拝読したので感想をメモ。

経営法友会(現勤務先も会員企業である)のレポートに掲載されたものが外部公開されているもの。その発端は、今は亡きBLJのブックガイド企画を偲んで始められた同会の月例会の「ブックナビゲーション」企画で*1、このシリーズは面白いので欠かさず見ている。最新の会では白石先生はじめ俎上に上がった本の著者の方々も出演されるという趣向で、なかなかに面白いものであった。

 

その企画を契機として、「下請法改正を『法律文章読本』の観点からカジュアルに論じ」るのが本稿で、特に法令における用語や表記の観点から論じている。読本とのつながりを考えるとなるほど、と思うテーマ設定と感じる。下請法改正が下位法令等の準備が追い付かないまま法案成立してしまったこともあって、注目を集めているという意味では時宜にかなったものという見方もできるかもしれない。

 

冒頭俎上にあがっているのは、変更される法令の名称それ自体。当局の担当者が使う「取適法」*2に対する批判はなるほどと思うし、著者が代わりに提案する名称もうなづけるところがある。ただ、個人的には「旧下請法」と言い続けると思う。おそらくそれが、もっとも誤解が少なく言いやすい呼び名だと思うので。「下請」という用語を使いたくないという当局の意向に忖度する気はないし、本当にその用語を廃したいのであれば、もっと覚えやすい名づけをすべきだったということに尽きると思うので。

 

その後に取り上げられている個々の表現についての指摘や著者自身の対応も、そう考える根拠が示されていて、なるほどと思うことばかりだった。定義語についてのコメントでは「血の巡りが悪くなる」という表現に苦笑したり、運送委託における3種の取引の区別は、確かにそうなるよなと改めて意識した。手数料等についての表現の方向性についての指摘は興味深いし、「責めに帰すべき」の送り仮名の扱いについての指摘はこちらは気づいていなかった点だった。3条通知・4条通知についての指摘も同様に他の法令の条文と並べて読んでいなかったので気づいていなかった。短い文章ではあるけれども、気づかされることが多かった。法友会レポートは、会員企業だといつでも読めると思って、読まないことが多いのだが、今回は読んでよかったと思った次第。

*1:某先達が企画実現に尽力されたと聞く。

*2:昨日の某所での某説明会でも使用されていた。法案の説明なのに、内容をSNSに書くなという謎の「お触れ」が出ていたのだが、いったいどういう意図だったのだろうか。