図書館で借りて目を通したので感想をメモ。
調査報道に従事してきたジャーナリストの著者が、情報公開制度の使い方を経験に基づき説く一冊、というところだろうか。
本書を読んでいてまず驚くのが、姑息な理屈を弄して情報を隠そうとする行政の姿勢。墨塗り、「公表」と「公開」の使い分け、特定の図書館に報告書を収めて終わりにしようとするやり方など、呆れるような実態が著者の経験談として示されている。こうした対応は著者だけに示されるものではないだろうから、行政というものに広汎に見られる「病理」のようなものであろう。個人として優秀な公務員もいるとは思うが、組織になるとなぜこうした振舞になるのか、不思議な話ではある。
いずれにしても、こうした「病理」に立ち向かうための術としては、万人に使えるものとして存在しているのが情報公開制度である。著者は本書でその駆使の仕方について、経験談に基づき解説をしてくれている。行政自身もその振舞が「無体」であることについて、一定程度自覚があるからこそ、情報を開示しようとしていないのだから*1、情報開示がそうした行動への歯止めになるのは、ある意味で当然のことかもしれないし、それが故にこうした術がなくならないよう、積極的に使っていく必要性があるのは、理解しやすいところ。
とはいうものの、著者のようなジャーナリストであればともかく、それ以外の職業の人間には、公開で得た情報の使い道がないのも事実だろう。その点について、言及がないのは、著者の立ち位置からすればやむを得ないのかもしれないが、残念なところかもしれない。弁護士であれば、法令改正に際しての検討過程の情報を得て、それに基づき法令の解釈に際して参考にするというような使い道は思いつくが*2、それ以外の職業の方々にとって、どこまで使い道があるか、よくわからない気がする。そうそう使い道もないのに、「公文書道」といわれるような忍耐と労力のいる道を進む人がたくさん現れるかというと、やはり疑問が残る。そうした意味では、主にジャーナリストや研究者の方々等に、使っていただくことを期待するのが良いのではないか、と感じた。