没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる@東京都写真美術館

掲題の写真展を見たので感想を簡単にメモ。氏の写真に関心があるのであれば見ておいて損はないと思う*1

 

木村伊兵衛さんというと、日本の写真の歴史の中では、「ビッグネーム」の一人であることは間違いないようだし*2、ライカ*3使いの達人としてこちらは認識している。リアルタイムでは存じ上げないが、一時期はカメラ雑誌でレンズの紹介記事での実写担当もされていたようである。今回は没後50年ということで、氏の作品の全貌を振り返る形の展示がなされていた。氏の写真は折に触れて目にすることはあっても、断片的にみるだけで、その全貌はよくわからないので、今回出かけてみることにした。

 

全体は7章構成。

第1章「夢の島 沖縄」では、戦前の沖縄の写真。「那覇の芸者」の写真は、個人的にはライカのソフトフォーカス用レンズタンバールで撮られたものとして記憶している。個人的には那覇の市街で撮られたものが、印象的だった。戦前の沖縄の人々の暮らしぶりの一端が垣間見えて興味深く感じた。

第2章は「肖像と舞台」。一連のポートレートが展示されている。有名人の肖像写真。いつ撮ったのかわからなかったと被写体に言われるくらいに、被写体に意識されない写真の撮り方をすることで、被写体の自然な表情を撮っているのは、さすが達人という感じがした。

第3章は「昭和の列島風景」。特に戦後すぐのスナップが印象深い。本郷森川町での一枚などは*4、構図がアンリ・カルティエ=ブレッソン風だなと思うものもあったが、第4章の展示でブレッソンの影響が指摘されていて、自分の見立てがある意味で間違っていないのに気づき、少しうれしかった。

第4章は「ヨーロッパの旅」。軽妙洒脱という感じの氏の写真とパリの街とは相性が良いのではないかと感じた。ブレッソンが撮影中と思しき所を撮影しているのにも達人の面目躍如というところか。

第5章は「中国の旅」。氏のオリジナルプリントも展示されていた。経過した年数に応じて劣化している部分もあるが、モノとしての存在感が違う気がした。

第6章は「秋田の民俗」。「秋田おばこ」の写真は「那覇の芸者」の写真と同様に有名と思われる。秋田に特段の思い入れがないこともあってか、正直印象が薄かった。

最後の第7章は「パリ残像」。カラーフィルムでパリを撮ったもの。氏がカラーで作品を撮ったものを見るのは初めて。個人的には、良いタイミングで通行人を捉えたミラボー橋での一枚が印象深い。

 

通してみると、気配を消して自然な状況を切り取る達人という印象が強い。こういう域に達するのはそもそも不可能としても、少しでも近づきたいと思うばかり。そのためにはもっと精進?しないといけないのだろう。

 

*1:なおこちらのレポートも参照のこと。

*2:新人写真家向けの賞として、木村伊兵衛賞があることからもその点は窺い知れるだろう。

*3:いうまでもなく銀塩写真のそれである

*4:こちらの番組での内容を見ると。撮影場所が、本郷に通っていた際に、通ったことのある場所だったことに気づいた。