田沼武能 人間讃歌@東京都写真美術館

掲題の写真展を見たので感想をメモ。

 

昨年逝去された田沼武能氏の回顧展というところか。90歳過ぎて、亡くなられる半年前の作品も今回展示されていたので、生涯現役と言っても過言でもないのだろう。活動年数も長かった方の作品群を3部構成で展示していた。

 

第1部は戦後の子供たち。第2次大戦後から1960年代初めくらいまでのモノクロ写真で、こちらの生まれるよりも前の時代のものなのだが、何もないところからの復興という感じが背後にあって、多少薄汚かったりしても(特に1940年代のものが特にそうだった。盛大に鼻水を垂らしている子供とかは、僕らの世代ではもはや見られなかった。)、子供たちが元気で、生命力も感じられて、良い。個人的には、路上でローセキで落書きしている子供の写真が印象的だった。自分たちもやったことはあるが、最近そういうのを見ないので。

 

第2部は人間万歳ということで世界各地の人間をカラーで撮影したもの。子供も大人も写っていた。中には悲惨な状況下にある人々もいて(やはり時節柄もあってか、チェルノブイリ被爆した少女のポートレートが目を引いた。)、そういう人たち相手でも、明るい側面を捉えようとしているように感じられるのが、まだ救いになるという気がした。個人的には、順路的に最後に展示されていた老夫婦を後ろから撮った一枚に特に味わい深いものを感じた。こういうのをきちんと撮れるのはすごいと思った。

 

第3部は武蔵野をカラーで撮った写真。東京の下町ご出身なのに何故武蔵野?、という気もするが、ご本人の抱くふるさとのイメージに近いということらしい。こちらの知っている場所(井の頭公園等)で撮られた写真とかもあり、一定の親近感は覚えるのだが、もともとスナップや人物写真の印象の強い巨匠木村伊兵衛さんのお弟子さんということもあってか、風景を撮った写真よりも人間が写っている写真の方が個人的には印象が良く感じた。

 

今回の展示は氏のキャリアのハイライトを展示したものではあると思うが、かなり割り切って3部構成にしている感もあり、今回触れられなかった点、例えば、報道写真家(ライフ誌とも契約していたとのこと。)としての側面などがあることも留意しなければならないのだろうと感じた*1

 

名前しか知らなかった方のキャリアのハイライトを見ることができて、個人的には面白かった。

 

 

最後に入り口などの写真を貼っておく。



 

*1:さらに言えば、教鞭をとられて後進の指導にもあたられたという指導者としての側面もあるはず...。