川田喜久治個展「ロス・カプリチョス 遠近」

掲題の写真展を見てきたので、感想をメモ。

 

川田さんというと、1960年代から活躍されている大御所中の大御所で、インスタグラムも投稿し続けるなど、90歳になっても現役を続けている写真界の巨人という感じがする*1。個人的には、太陽や月・星も写されている「ラスト・コスモロジー」シリーズ、その中でも、太陽黒点とヘリコプターのショットが印象的だった。以前、かのシリーズの展覧会をPGIに見に行ったら、ご本人のお姿も拝見したことがあった。今回は会場のふげん社さんの呟きが流れて来たのを見て、見に行くことにした。

 

展示を見ると、まず「禍々しい」というか、夢に出そうな感じがした*2。多くの作品で、様々なイメージが重ねられ、各種の技法も駆使されて、ストレートに撮ったイメージからはかなり距離のあるイメージが現出されていた。色々なものが複層的に渦巻く現代を示しているということなのだろうか。よく見ると、重ねられたイメージの多くは、日常的な風景を切り取ったようにも見え、そういうものを積み上げて、技法を駆使することで、ここまで非日常的な、禍々しいともいうべきイメージが出来上がるというのは単純に凄いし、SNSの利用も含めて、最新の技術も取り入れて作品を作り続けられる柔軟さも凄いと思う*3。そういうところすべてが巨匠の巨匠ゆえんなのだろう。

 

写真をSNSに投稿してシェアすることを推奨しているかのような掲示があったのと、そもそも展示会場に他に人がいなかったこともあり、会場の様子などを撮ったものを以下貼っておく。

 









 

*1:写真家照井康文さんによる紹介ページが、過去の作品のハイライトの紹介もあって、分かりやすいのではないか。

*2:なので、作品集を買う気にはならなかった。それとは別に個別の作品も販売していて、値段表があった。相応のお値段が付いていたが、金額以前の問題として、手元に置くのは控えておきたいと感じた。

*3:銀塩写真が、印画紙周りの選択肢が減っていき、不便になっていることを考えると、デジタルへの移行は必然だろうし、その他のツールについても同様に移行せざるを得ないという側面があるとは思う。それと、川田さんについては、以前のカメラ雑誌での銀塩写真の時代のインタビューで、カメラは常に最新のものに買い替えているという話をされていたのを記憶している。そういう点からは、技術の流れについていくというのは、自然な流れというところがあるのかもしれないが、それ自体簡単な話ではないはずだから、凄いと感じることには何ら変わりはない。