続・お付き合いの仕方について

#本エントリは、#裏legalAC 参加企画です。幹事の@kanegoontaさん、ありがとうございます!例によって呟いたことを基にエントリにしてみた次第。

 

きっかけはこちらの呟き及びそこから始まる一連のスレッド。こちらのスレッドは、特に企業法務分野の弁護士の方々には示唆に富むのではなかろうか。

関連する内容として、かつて、こちらのようなエントリを書いたことがあった*1

 

現時点では、こちらは上場企業の法務の責任者ということになっているので*2、その立場から見て、先のこちらのエントリ(以下、「元のエントリ」ということがある。)*3に加えて、言えることがあるかなと思ったので、呟いた内容を基に、エントリにしてみる。例によって、こちらの現時点での体感に基づくものなので、異論等があることはいうまでもない*4。なお、以下では企業内法務*5の担当者*6が存在する企業が前提となっていることも付言する*7

 

企業が外部の弁護士に何らかの依頼をする際に、ある程度弁えのある企業の企業内法務担当者、特に部署責任者であれば、少なくとも内心では、コストパフォーマンスは意識することが多いのではないか。常に最優先ではないとしても*8

 

留意すべきは、ここでいうパフォーマンスというのは、訴訟でいえば、勝敗などの結果や自社の主張が受け入れられたかどうか、ということだけではない*9。それらも相応に重要なことがあるが、自社内の利害関係人*10の理解と満足を如何にして得られるか、ということも重要になることがあろう。この辺りは案件ごとに、及び、案件単位でも時と状況によって、何がどの程度重要かは変わってくることがある。その中では企業文化との整合性ということも問われることがあるかもしれない。そういった点も含めての総合評価ということになろうか。

もちろん、外部の弁護士が、自身及び事務所の能力を活用して、上記の意味でのパフォーマンスを発揮する上では、企業内法務の担当者との連携が必要で*11、外部の弁護士の能力を如何に引き出すかは、企業内法務の腕の見せ所の一つなのだろう。そうした意味では連携のしやすい事務所をどう選ぶかという視点が入ることもあろう。

 

また、コストという意味では、事務所の豪華なしつらえとかを見ると、このコストはどこから出ているのか、その分コスト高になるのではないかという疑念が出ることもある*12

さらに、ここでいうコストは、弁護士事務所に支払う金銭だけを意味するとは限らないことも留意すべきだろう。依頼者側にかかるストレスの類はすべて、ここでいうコストに含まれるとみるべきと考える。

そうしたコストを払ってまで、この事務所・この先生方にお願いする案件か、という疑念が脳裏をよぎることもある。

 

コストパフォーマンスという意味では、企業内法務の担当者としては、外部の弁護士・弁護士事務所にお願いをする際には、案件自体の内容整理と併せて、案件の内容を吟味して、選択可能な範囲の中で*13、案件に即した事務所に依頼することで、コストパフォーマンスの最適化を考えることになるはず。そういう意味で、四大及びそこに準じた大手事務所とかでないと対応できないものはそういうところに頼みつつ、そういうものを如何に減らして、もっとコストパフォーマンス的に優れた事務所*14に、依頼するかということが、企業内法務の担当者の腕の見せ所、ということになるのかもしれない。

その際には、信頼できる事務所を選ぶことだけではなく、そうした事務所との間ででも、一定の緊張関係を保つことも必要だろう。そのための手段として何ができるのか、というと、もちろん、他に同様に事務所を起用して、そことの競争関係を意識してもらうというのは、思いつくが*15、そこまでのリソースが自社に常にあるとは限らない。タイムチャージの形であれば*16、明細をきちんともらって、中を精査するということは*17、一つの手かもしれない。

 

…ということで、一切オチのないまま本エントリはここまで。次は無双御大こと、@ahowotaさんです。例によって、無双なエントリが拝見できるものと思われます。よろしくお願いいたします。

*1:なお、このエントリは、一部の表現を修正のうえ、199問のQ24につながっている(この部分は宣伝を含んでいる。)。

*2:本人の主張による。

*3:元のエントリを今見直すと、渉外系の案件で求められる、各国の弁護士のネットワークのような話があまり意識されていない気がしたが、考えてみると、結局それも、一定の水準の弁護士(DD等の場合よりも経験値とか専門性の要求度合いが高くなるが....。)がいることが重要で、個別性が高いわけではないということを考えると、元のエントリで言うリーガル土方の上位互換みたいなものと言えるのではないかと考える。その意味ではその範疇に含めて考えてよいだろう。

*4:こちらの現在過去未来の行状が高い棚のうえに上がっていることも言うまでもない。

*5:機能としてのそれであり、名称は問わない。

*6:いうまでもなく資格の有無は問わない。

*7:当然のことながら、依頼者側の視点でのエントリなので、依頼を受ける側の先生方にとっては、違和感のある内容が含まれている可能性は残る。それらについては、あらかじめお詫びを申し上げる次第。

*8:時間的な要素が最優先でその辺りは問えないということも相応にあるだろう。

*9:そもそも事実の時点で負け確定という訴訟も相応にある。そういう場合では、どういう負け方、相手方の主張の認容度合い(メーカーでのPL系の話のようにその内容次第では同種の訴訟が続発する可能性がある時には、この辺りが重要になる可能性が高いことは言うまでもない。)や、こちらが負担する損害額が重要になる事がある。

*10:直接の依頼部署を含むがこれに限られない。論理による説得に応じそうにない上層部というのが最も厄介であるというのは、想像に難くないのではないか。

*11:長期的な観点から「育成」的な意味合いを込めて、事業所などを案内して、自分で体感してもらうなどどいうアレンジが奏功する場合もあるだろう。

*12:なお、それが直ちに悪いという意味ではない。一定の能力のある弁護士を確保するためには相応の待遇が必要なことはいうまでもないし、その中には事務所の執務環境の快適さが相応の受容性を有する事は想像に難くない。

*13:選択肢がどの程度あるのかも状況によって異なる。諸々のしがらみの中で選択肢が事実上ないこともあろう。また、会社的な制約が仮になかったとしても、コンフリクトの関係で、事務所に案件を受けてもらえない事案とかも相応に存在する。超大手企業が相手となる可能性があるときは、四大が全部コンフリクトで受任不可ということも想定し得るだろう。かの企業からすれば、敵に回られないよう囲い込みに成功したということになるかもしれないが。また、そうした選択肢を確保しておくため、外部のいろいろな事務所との何らかのネットワークを構築しておくことは重要かもしれない。

*14:四大及びそこに準じた事務所から独立されるケースに多く接するように思うが(その「はしり」が柴田先生たちだろうか。)、そういう事務所に依頼するのは一つのアイデアかもしれない。

*15:他方で事務所側からすれば先に述べたような「育成」過程を経ることで、依頼者の理解の度合いにおいて、他の事務所に差別化を図ることができるという見方もあろう。

*16:なお、タイムチャージが万能とも限らないことも付言する。予備知識の理解に時間がかかる割に、訴額の小さな案件では、費用倒れになる可能性もある。米系外資の時にそういう事案にあたったことがあったが、その際には、米国側に説明して承認を得たうえで、タイムチャージでなく旧日弁連基準で受けてもらったこともあった。

*17:そういうことをしていることを示すことは、弁護士費用を野放図に使っているのではないかという疑いの目を向けられることへの対応として、社内でも有用ではないかと考える。