パワハラ上司を科学する (ちくま新書 1705) / 津野 香奈美 (著)

一通り目を通したのでメモ。企業勤めの人は読んでおいて損のない一冊。

 

パワハラについて、医学・保健学・公衆衛生学の学位を持つ著者が研究した結果を一般向けに解説したもので、パワハラが起きる仕組みとそれを踏まえての防止策を解くもの。

個人的には、小さい所帯とはいえ自分が部門長なので、自分がパワハラ上司になっていないかという点がまずきになっている。それだけではなく、現職では、内部通報の対応にも関与しているが、パワハラに関する通報・相談の類も窓口に寄せられており、全部が全部、最終的にパワハラとは断定できるわけではないとしても*1、なぜパワハラをするのか、どうやったら防げるかという点については、関心がある。法律面から見た部分については予防のための研修などをすることもある。そういう点で関心のある分野ということもあって、読むのは苦にならなかった。分量も手頃で、東京から名古屋への新幹線の往復の車中で読み終えられるくらいだった。研究手法などについての評価の仕方からしてわからないので、研究内容の当否は評価できないものの、解説されている内容は、素人目にはなるほどと思うところが多かった。

 

予防策について、全部が全部実践できるとは限らないとしても、研究からこういうことが判明しているということを理解して、書かれているうちのいくつかだけでも実践できれば、それだけでも、パワハラリスクの軽減には寄与するのではないかと思う。管理職層にとっては、部下への「ダメ出し」の仕方*2だけでも履践できれば、手始めには良いと思うし、パワハラリスクチェックリストで我が身を振り返ったり、パワハラの起こりやすい職場チェックリストなどで自部署の状況をチェックしてみるのも良いと感じた。もちろん本書をみんなで読むという形でのパワハラ防止研修というのもあり得る使い道ではないかと感じる*3

 

いずれにしても、特に企業で働いているのであれば、所属部署の如何を問わず、身を守る為の手段として、目をとおしておいて損のない一冊だろうと思うし、パワハラ防止などに関与するのであれば、座右において、事案対処の際に参考にするのに適した一冊ではないかと感じた。

 

 

*1:通報者・相談者保護の要請もあるところでは、証拠不十分みたいな結果になることもある。そういう場合でも、行為者と目される人間に対してはヒアリングはするし、その際には、牽制の意味で釘は指すようにしてもらっているが。

*2:内容自体は既によく言われることではあるので、目新しいものは一切なかったが。

*3:普段文章を読むのに慣れていない人が読むにはちょっと分量が有りすぎるかもしれないので、そういう使い方をするには工夫がいるだろうが。