映画「ジャズ・ロフト」

見てきたので感想をメモ。以前に見たユージン・スミスの写真展でチラシをもらって、その存在を知った映画

 

ユージン・スミスが、NYのロフトに住んでいた時に、そのロフトではミュージシャンが夜な夜なセッションをしており、彼がその様子を写真と録音(オープン・リールのテープだった)していたのが膨大に残されていて、それらを基にしつつ、関係者のインタビューなども交えて、その当時を追体験する形のドキュメンタリー、というところになろうか。

 

まず驚いたのが、ユージン・スミスの録音へのこだわり。もともと2.5万枚のレコードを持つマニアだったのだが、録音機材を最新のものに買い替えるだけでなく、ロフトに穴をあけるなどしてマイクを配置しまくって音を拾おうとしている。オープンリールのテープで操作もそれほど容易とは思えないのに、8年にわたり4000時間も録音しているというのにも驚く。演奏と関係のない、ラジオの音声や自分が電話している様子も残されているので、録音自体に興味があったのだろうか。それと、録音のみならず演奏中の写真の撮影もしていて、気配を消してそういう作業を続けていたというのも驚く。出てくる写真については、ミュージシャンが演奏等に集中している感じで、撮り手のユージン・スミスの存在を意識していると思われるものはなかった。

 

僕はジャズに疎いので、音楽の凄さはわからなかったが、良い感じの音だなとは思ったという程度だった。後半で出てくるホール・オーヴァートンとセロニアス・モンクのリハーサル風景(「セロニアス・モンク・オーケストラ・アット・タウンホール」に結実する)は、凄いものが、生まれてくる過程というのが門外漢にも伝わってくる感じがした。

 

もう一つ興味深かったのは、ユージン・スミスの通常の?写真家としての活動。ロフトには暗室も設けられ、そこでの作業の様子や彼にプリントへのこだわりについても語られている。暗室作業の様子や、プリントに対する作業の入念さ、雑誌の記事での写真に対する細かい指示や、自室内の壁に貼られる膨大なプリントの量(しかもそれが積み重なっている)などからしても、完璧主義者ぶりが良くわかる。250枚一箱の印画紙を1枚のプリントを得るためだけに使い切るというのも凄かった。こういう仕事の仕方をしていれば、周囲との軋轢は不可避だっただろうなと納得する。

 

いずれにしても、写真かジャスに興味があるのであれば、堪能できる映画になっていると思うので、該当の方々におかれてはご覧いただくことをお薦めする次第。

 

 

映画館(BUNKAMURA)で撮ったものを2枚。

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パンフレット(右側)もしゃれた感じに仕上がっている。

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